月の住む湖  −月のきれいな夜の出来事−


 ふぁきやがゆっくりと本のページをめくる音と、風の音しかしない静かな夜。

 「くぁ…(ねぇ…)」

 「どうかしたのか?」

 「ぐわわ…(なんでもない)」

 「あひる」

 「くわ(わわ)」

 ふわっと、何度も何度もふぁきあがやさしく、あひるの頭をなでた。

 「……何も心配することはない。大丈夫だ」

 「くわわ…(ふぁきあ・・)」

 こんな時間が、ずっと続けばいいのに…。

 きゅっと痛くなる胸と感情をあひるはもてあましていた。

 つらくて、せつなくて、いとおしい…。

 そんな感情。

 あひるじゃなくて、人間の女の子だったらよかったのに…。

 それは、何度も何度も考えてしまうこと。

 でも、プリンセスチュチュであったこと。王子ではなく、不器用な騎士を愛したことは後悔していない。そして自分があひるであるということに誇りを持っている。

 ただ、ふぁきあのそばに、いつかいられなくなる日が来るのではないかと、それだけが恐かった。

 「くあ」

 「眠いのか?」

 考え事をすると、眠くなるのは昔からの癖。

 ふぁきやは本を閉じ、うつらうつらと舟をこぐあひるをだいて、ゆっくりと立ち上がった。

 「きれいな月だな…」

 ふぁきやの声につられて、外を見るとお月様がすごくきれいだった。

 「くぁ(本当)」

 まんまるで、あたたかい光を放つ月。

 今日、あの湖に行ったら、とってもきれいだろうな…。そう思ったら、何がなんでもふぁきやと一緒に湖に行きたくなった あひるは、ふぁきやの服をくちばしで引っ張った。

 「くわわぐぁ(ふぁきや、行こう)」

 「行こうって、どこへ?」

 「ぐわわ!(いい所!)」

 ばさばさと羽根を広げて、ふぁきやの腕から降り立つ。

 「もう遅いから、少しだけだからな」

 「くわ(わかってるって)」

 言い出したに聞かないあひるのことをよく知っているふぁきやは、仕方がないと溜息を一つついて、あひるの後についていった。

   


第二話「月のきれいな夜の出来事」
色々な展開を用意していたのですが、少女小説らしく…(笑)

06.6.15 かきじゅん