李ラックマ9 「いっしょ」  


 

 「帰りゅ〜」
 城に帰って、夜になって青樺は泣き通しだった。
 誰があやしてもダメだった。
 「…どうする?」
 「どうするも、こうするも…」
 迎えに行った元堅も貴沙烙も、ほとほと困り果てていた。
 昼間はよかったのだ。朱緋真の幻影や、氷霧と遊んで、元堅の髭を引っ張り、貴沙烙の後をついて回った。
 夕方から、「しえーけ…、俺のこと嫌いになった」 と、悲しげな顔になり、氷霧がうっかり変身してしまったところから、火がついたように泣きはじめた。夜の帳が下りてくるにつれ、大好きな李暫嶺の青い色と、史鋭慶の闇色を思い出してしまったようだ。
 「青樺」
 元堅は青樺を抱き上げた。
 「がんけんのおじちゃん…」
 「おじちゃんは余計だ…」
 涙をためて、しゃくりをあげる青樺におじちゃん呼ばわりされて、元堅はがくりと力を落とした。
 「李ラックマ、迎えに来りゅ?」
 「青樺…」
 それでも、昼のことをあまり理解していないのか、史鋭慶の屋敷に帰ると。あのおかしなくまの格好をした男がいいと言う。
 元堅の顔を見て、自分の要望が聞き入れてもらえないことは悟ったらしい。
 「しえーけと、李ラックマのトコに帰りゅ〜」
 モゾモゾと動く。記憶は後退していても、身体は成人男性。元堅がいかに大きめサイズとはいえ、動かれるとたまったものではない。
 「あっ!」
 ストン。と降りて、だっ!!と、青樺は走りはじめた。
 「青樺っ!!」
 追いかけて引きとめようとする元堅に、青樺はとどめの一撃を放った。
 「がんけんのおじちゃんのばかぁぁぁ〜」
 「青樺…」
 おじちゃんとばかの二言が聞いて、元堅は放心状態となる。
 「バカか、お前はっ!」
 貴沙烙が後ろから元堅を張り飛ばした。
 元堅が落ち込み、貴沙烙が突っ込み、青軍メンバーが右往左往している間にも、青樺は走っていた。
 ただただ、史鋭慶と李ラックマと一緒にいたい。その気持ちが、青樺を動かしていた。
 「よいしょ」
 城を抜け、山の中へ。
 しかし、山は暗かった…。
 ビタンッ!と、木の根っこにつまづいて、顔から突っ込んだ。
 「ふぇ…」
 青樺は、泣き出した。暗くて、恐くて、悲しくて…。
 それは、疲れて、寝てしまうまで。

 「こんなところにいたのか…」
 「泣き疲れてしまったようだな」
 青樺は、夢の中で史鋭慶と李ラックマの声を聞いた。夢じゃないならいいのにな…。と、思って、ぎゅっと史鋭慶の外套を掴んでいた。



    


☆あとがき☆
次回、李ラックマ感動(?)の最終回です。
小リラックマ青樺の記憶は元に戻るのか?その時、史鋭慶と李ラックマのことは忘れてしまうのか?
次回、こうご期待ください。

06.9.14 かきじゅん