李ラックマ4 「おみやげ」


 「まぁ、いいのではないか。そんな些細なこと」
 ずずっと茶をすすって、李暫嶺は幸せそうに目を細めた。
 本当に、くまの格好さえしていなければいい男である。
 「……」
 「…史鋭慶は覚えていないと思うが、俺は史鋭慶に一つ、貸しがある。それが理由といえば理由か…。きっかけに過ぎないといえば、きっかけでもあるような些細なことだ」
 李暫嶺はふと、俺を見て、それから何かを探そうと視線をさまよわせた。
 俺は人に恨まれこそすれ、人に何かをしてやったなとどということなど何一つしていない。
 「勘違いじゃないのか…」
 どう考えてもそんなことはないと思い、きっと李暫嶺の人違いもしくは勘違いだと思った。
 「史鋭慶は自分で思っているより、いいやつだと俺は思うぞ」
 しかし、李暫嶺はやわらかな笑みを浮かべただけだった。
 「おい、李暫嶺。あの塊はなんだ?」
 ふと部屋の隅に転がる白っぽい塊に気が付き、俺は李暫嶺に問いただした。話題が変えたかったというのもあるが、あの塊、どうみても人間にしか見えない…。
 「ああ。紹介するのを忘れていたな。コリラックマだ」
 よいしょ…と、李暫嶺が意識のないコリラックマを抱きかかえた。
 「……」
 一瞬、息を呑んだ。そこにいたのは、意識なくぐったりしていて、しかも白いくまの格好をした青軍の大将、神童と呼ばれている陶青樺だった。
 「前に史鋭慶が青軍が…。といったいただろう。仮にも屋敷に世話になっているわけだし、御礼もかねて暗殺してやろうと思ってな」
 いたって爽やかに、李暫嶺はのたまった。
 「そのときは、ちょっと失敗してしまったのだが、町に買い物に行ったときに偶然発見されてしまったのだ。適当にまこうかと思っていたら、荷馬車と衝突して、気を失ってしまっていたので、つれて帰ってきたというわけだ」
 「……おい」
 何かが激しく違っていると、史鋭慶は思った。
 「それと陶青樺って名前じゃなくて、コリラックマだぞ、史鋭慶」
 しかし爽やか笑いの李暫嶺は、まったく気にしていない。
 「ちなみに、お前への土産のつもりだったのだが、うけとってくれるか?」
 「そういう問題なのか…」
 史鋭慶は深く深く、考え込んでしまった。


    


どんぐりころころどんぶりこ。
どんどん李暫嶺さんがおかしい人です。史鋭慶さんは意外と苦労性…。
がんばれ、史鋭慶!明日はどっちだ…っ!?
06.6.6かきじゅん