温泉へ行こう!  第一話「みんながあの子を狙ってる」B




 「なぁ、太一。タケルとヒカリちゃんはいつの間にあんなに仲良くなったんだ?」
 「かなり前」
 太一の一言にショックを受け、ヤマトは顔色を変えた。
 「…………」
 「うっそ」
 「た〜い〜ち〜」
 再び顔色を変え、茹蛸の様に紅くなっているヤマトを、太一はシレッと無視した。

 「風呂場異常ナシッと。ヤマト、お前もそろそろタケル離れしたら?」
 太一は、自分も人のことは言えないはずなのに、にやりと笑った。
 「そう言う太一こそ、ヒカリちゃん離れしろよ」
 太一に言われてはたまらないと、戸棚を開けたり閉めたり、異常がないか確認をしながらヤマトは言った。
 「俺はいーの。ヒカリは女の子だから」
 「なんだよ、そりゃ」
 「男は早く独り立ちさせたほうが良いけど、女の子は男が守るものだからな」
 「今日びは女が強いんだぜ」
 「まぁ、いつかまかせられるような男とか、ヒカリ自身が独り立ちするような時期が来たら、な」
 太一は、覗き込んだサウナ室に何も異常がないことを確認して、ドアを閉めた。 少し照れて笑う太一に、ヤマトはなんかムカついて、風呂場を出ようとした。
 ズルッと、ヤマトは視界がゆがんだように思った。
 「ヤマトッ!!」
 太一が叫んだ。
 手が差し出されたけど、それは届かなかった。
 視界がゆがんだんじゃなくて、自分が滑ったのだとわかったのはつかの間のこと。

 ヤマトは滑って、温泉の中にダイブし、後頭部を殴打した。


    


恥をさらしながら生きています。
06.7.11かきじゅん