温泉へ行こう! 第一話「みんながあの子を狙ってる」C
ヤマトをお湯の中から引きずり上げて、丈に取りあえず見てもらった。
「取りあえず氷枕で冷やしておこう」
そう言われて、ソラが氷枕を作ってくれた。
看病するのは独りで十分と、皆、ご飯を作りに行ったり、浴衣を発見したので来ていた服をコインランドリ―(何故かあった)で洗濯しに行ったりしていた。
その独りで十分の看病役に抜擢されたのは、太一だった。
「キレーな顔なんだなぁ。美形って言うのか?」
太一は誰もいないのをいい事に、好きなことをいーたいほーだいいっていた。
ふと思い立って、とこまでしたら起きるのかやってみたくなった。
こういうのは旅行の醍醐味というやつ?つねったりとか、耳元で囁いたりとか、く すぐったりするのだ。人によっては爆笑できること請け合いである。
しかし、太一は何故かそのキレイな顔にキスしてみたくなって、寝ているのを良いことに実行に移した。軽く瞼に口付ける。
「まるで眠り姫のか白雪姫だな」
なんだかワクワクする。太一は続いて、ヤマトの耳元に吐息を吹き掛けた。
「ヤマト」
ささやいて、柔らかいほっぺにキスを落とす。そして、紅い唇にも。
「っん」
微かな吐息と共に、ヤマトが目を覚ました。
「ヤマト、目、覚めたか」
ヤベっと思ったのもつかの間、何か言われたらしらばっくれる気マンマンの太一は、取り繕ったように笑顔でヤマトの顔を覗き込んだ。
「お兄ちゃん、だれ?」
顔を覗き込んだ太一に向かい、ヤマトは不思議そうな顔をした。
「何言ってんだよ。俺だよ、八神太一」
「知らない……」
力なく、心なしかヤマトは怯えていた。
「もしかして頭うったからか?」
「?」
「ちょっと待ってろ」
太一はそう言い、部屋を出て行こうとした。
「おいてかないで!!」
ヤマトに服を掴まれて、太一はたたらを踏んだ。
「おいてかないでよぅ。お父さんも、タケルも、お母さんも僕を置いてどっか行っちゃうの。一人はいやなんだよぅ」
ぼろぼろと、大粒の涙を流す。
「わかった、わかった。俺が側にいてやるよ」
「ホント?」
「ホント」
「だってね、お母さんはタケルと出て行っちゃったし、お父さんは仕事でどっか行っちゃうの。家で僕一人だけで寂しくて。でも、僕はタケルのお兄ちゃんだから、しっかりしなくちゃいけないでしょ?だからさびしいとか、悲しいとか、泣いちゃいけないんだ。それに男の子だから。いつか僕が大きくなったら、お父さんとお母さんに仲直りしてもらって、タケルと一緒に暮らしたいんだ。それがダメでもタケルはちっちゃいから、たとえ離れてても、お兄ちゃんの僕がしっかりして、守らなきゃいけないって………」
一気に自分の中に貯めていたものを吐き出し、ヤマトは再び泣き出した。
泣いちゃいけないのに、泣いちゃいけなかったのに、と、自分を責めながら。
「……泣いても良いよ」
「っ……、だって」
「泣いても良いよ。ここには俺しかいないから、泣いてもいいよ。だれにも喋らないし、怒らないから」
ヤマトは太一に抱き付いて、泣きじゃくった。
太一は優しく、「よくがんばったな」と、声をかけながら、ヤマトの頭を撫でていた。
ときおり、瞼や頬に口付けながら。
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スイマセン、次は裏行きです。見ての通り太一×ヤマト・・・。
06.8.7かきじゅん