箱は閉じられて、彼はいなくなった。

 世界は救われたけど、人は救われなかった。


 天秤


 「どうして…?」
 そう、涙を流す彼の妹に、私は何も答える術を持たない。願わくば、その鎌で、この命を絶ってくれないかと、愚かなことを考える。

 「ごめんなさい…」
 謝罪は、箱の中の彼に宛てたものか、目前で大鎌を持ったまま涙を流す彼女のためか。
 目を閉じれば、彼の姿が浮かぶ。
 涙が、頬を伝う。
 腕の中の箱がかすかに震えて、彼の存在が、まだその中にいることを知る。

 ――そこから出たい?
 それとも…。
 
 問いかけは、帰ってこない。

 世界と、彼と。天秤にかけれるはずもなかったのに、天秤に掛けたのは私。彼の良心につけこんで、自分のエゴで、彼を箱に閉じ込めた。
 世界も、彼も、守りたかった。

 カラン…。
 乾いた音がして、大鎌がサイザーの手から落ちた。崩れ落ちて泣く彼女を、フルートは抱きしめた。

 赤く染まった羽は、ここにくるまでに幾人の血を吸ったのか。

 ゆっくりと、私は彼女の髪を、羽をさすった。
 「どうして、あいつだったんだ…」
 嗚咽は、止まることはない。
 「犠牲の上に成り立つ平和なんて、ありえない…」
 彼女の身体についたいくつもの傷を癒しながら、私はただ「ごめんなさい」と呟いた。

 TO BE CONTINUED?

  


裏日記で連載してました、星花様への捧げもの。
裏だけでやるのも寂しいので、表に持ってきました。
果たしてハーメル知っている人がいるのか・・・。何処までマイナー行くきなんでしょうね・・・。
2006.11.28かきじゅん