温泉へ行こう! 第二話「ヤマト☆パニック」E
「いやぁ、行かないで……。お父さん、お母さん…タケル…」
ヤマトの寝言で目が覚めた。
「ヤマト?」
「どうしてみんなどっか行っちゃうの?ねぇ、美和ちゃん…、坂口先生…。なんで僕を置いてっちゃうの……」
涙がヤマトの頬を伝う。
なんかムカツク…。ヤマトが俺の知らない奴の名前を呼んで、しかも泣くなんて!
「ヤマト!」
強く呼んで、肩を揺さぶる。
「あ……お兄ちゃん……」
「夢見て泣いてたぞ。いったいどんな夢、見てたんだ?」
俺はいたって優しく聞いたつもりだった。
「ふえぇぇぇぇぇ。お兄ちゃ〜ん」
突然泣き付かれて、俺は言い方が悪かったのだろうか、はたまたヤマトにとってはよほど怖い夢だったのだろうかと悩んだ。
「お兄ちゃんはどっか行っちゃわないよね?僕を置いて、どっか行ったりしないよね?」
涙ながらに訴えられて、いったい何がなんだかわからない俺は戸惑った。
「なんで?俺はどこにも行かないよ?」
そっとヤマトを抱きしめて、あやす様に背中を擦った。
「だって…。だって、みんなどっか行っちゃうの。僕のこと好きだって言ってくれた人は、みんなどっか行っちゃう…」
「俺はどこにも行かないよ」
「ホントに?」
涙をいっぱい溜めた目で見上げられて、俺の心臓はオーバーヒートしそうだ。
「ホントのホント」
「ホントのホントのホント?」
「ホントのホントのホントのホント。信じられない?」
必死に聞いてくるヤマトに、俺は微笑んだ。ヤマトは少し考えこんだ。
「だって美和ちゃんも坂口先生も、お父さんもお母さんもタケルも、僕のこと好きだって言ってくれた人はみんなどっかに行っちゃった。一人はイヤだよう…」
ボロボロと泣きまくるヤマトをどうしたものか…。かわいいけど。
「大丈夫。俺はヤマトを置いてどっか行かないよ。ヤマトがイヤだって言っても、俺はヤマトのことが大好きで離れたくないから、絶対そばにいる。約束する」
「やくそく?」
キョトンとして、ヤマトが泣き止んだ。
「ああ、約束。そうだな…。約束やぶったら針千本飲んでやるよ」
ニカーっと笑うと,ヤマトもニコって笑ってくれた。
「じゅあね、約束」
ヤマトが小指を突き出した。
「指きりげんまん、約束やぶったら針千本飲〜ます。指きったっ!」
第二話 END
やっと第二話終了です。
ちゃんと第三話に続くんでしょうかね。。。(オイ)
いえ、これでは中途半端だからね、完結はさせましょう。ちゃんと。
2008.10.5 かきじゅん