温泉へ行こう! 第一話「みんながあの子を狙ってる」E
「タケル君、アーン、して」
「あーん」
「おいしい?」
「うん」
朝からいちゃつくちびっ子二人は、いろんな人の視線を一身に受けていた。
「うーっす」
みんなで食卓を囲む席に、太一は遅れて入ってきた。
「あ、おはよう。お兄ちゃん」
白いご飯の上に、味付き海苔を乗せ、器用に箸でつまんでタケルの口の中に放り込みながら、ヒカリは振り返った。
「わりぃ、ソラ。ヤマトの分の朝飯、持ってくからくれるか?」
いちゃつく二人には目もくれず、太一はぼりぼりと頭をかいた。
「ええ、いいわよ。目は覚ましたの?」
「ああ。なんかあちこち打ったらしくって」
確かに打ったが、頭だ。だが嘘は言っていない。
「そんなに悪いの?」
「そうでもないけど、アオタンがいっぱいあったな」
「ふーん。はい、これ。太一の分もあるから」
「さんきゅ」
そしてまた、もそもそと部屋を出て行く。
自分の兄のあまりの様子のおかしさに、ヒカリは微かに首を傾げた。
いちゃつきすぎだ。小学2年生・・・。
06.8.11かきじゅん