フィリアとヴァルガーヴの冬支度

 〜木枯らしが吹きはじめたら〜



 冷たい風が吹くようになった。
 「秋もそろそろ終りね」
 フィリアはヴァルガーヴの小さな手を、きゅっと握った。
 「なんで?」
 人間の年の頃でいうと、5歳ぐらいの大きさのヴァルガーヴは、不思議そうに尋ねた。
 「冬が来るからよ」
 フィリアは、そう言って微笑んだ。それから、
 「冬の準備をしなくっちゃ」
と、小さく張り切った。
 ヴァルガーヴはなんだかよく分からなかったけど、フィリアが楽しそうなので、まぁいいか。と、にっこり笑った。



 家に帰ると、フィリアはまず大きな瓶を取り出した。
 「何をするんだ?」
 「クリスマスケーキの準備よ」
 「中に、何が入っているんだ?」
 「ドライフルーツをお酒でつけてあるのよ」
 「くりすますって、何だ?」
 「神に祈りをささげる日よ」
 「ふぅん」
 なんだかよく分からないけど、フィリアが楽しそうなので、なんでもいいか。と思う。
 「ケーキを作って、それを毎日一切れづつ食べながらクリスマスを待つの。クリスマスには、ご馳走を食べて、またケーキを食べるのよ」
 エプロンをつけ、長い髪をリボンで束ねたフィリアが、説明してくれた。
 ケーキが毎日食べれて、さらにくりすますの日にはご馳走とケーキが食べれるって、なんかすごい日だな。
 ヴァルガーヴは、ちょっぴりクリスマスが待ち遠しくなった。
 「それって、いつなんだ?」
 「12月25日よ」
 飾ってあるカレンダーを見ても、指折り数えても一ヶ月以上も先のことだ。
 「なんだ。まだまだ先じゃないか」
 ほんの少しふてくされて、そう言うと、フィリアはクスクスと笑った。
 「一年に一回しかないから、いろいろな準備がいるのよ」
 「ふぅん」
 気のない返事をしていると、バターや卵を取り出し、準備をしているフィリアが、
 「手伝い、期待してるわよ?ヴァルガーヴ」
と、言った。
 面倒だな…。と思ったけど、くりすますには、ご馳走とケーキが食べれるのだ。
 「わかった〜」
と、とりあえず返事をしておいた。



 END

  


クリスマス&末年始連続企画。

スレイヤーズTRY編は、『フィリアとヴァルガーヴの冬支度』というタイトルでお届けします。

日本でクリスマスケーキというと、生クリームの乗っているケーキですが、諸外国ではドライフルーツを使ったケーキやパンがほとんど。
お酒につけたドライフルーツを使ってケーキを焼き、さらにそれに砂糖をコーティングしたり、お酒をかけたりして、クリスマスの一ヶ月前から、薄く切って、食べつづけるんだそうです。

うちは、焼きたてをもしゃもしゃ食いますが…。
2006.12.14 かきじゅん