思い出すのは、幼かった自分と弟。

 ランタンを作って、飾り付けをした。

 それから、手をつないで、家をまわった懐かしい思い出。



 
Trick or kiss



 「Trick or treat」
 ふいに差し出された、見慣れた手。
 書類から視線を上げると、やけにうれしそうな弟の顔があった。
 そう、そんな季節だったのかと、思う反面、「仕事中に何をしているんだ」と、叱責しなければならない自分の立場を思い出す。
 だから、
 「まだそんなものがほしいのか?」
 スッパリ言い切って、視線を書類に落とした。
 「いえ」
 否定の言葉を口にした弟にビックリして、顔を上げる。
 「ちょっと懐かしかったもので…」
 弟は少し照れながら、ジャック・オー・ランタンをかたどったクッキーを差し出した。
 「これは?」
 「フィーネさんと、バンのやつが大量に作ったらしくって、もらいました。配り歩いているみたいですよ?」
 手を差し出すと、そっと置かれるかわいらしいクッキー。
 懐かしく思い出すのは、まだ幼かった頃の思い出。
 かぼちゃを彫り、ランプを点して、家々をまわってお菓子を貰った。トーマと二人で、手をつないで…。
 「味は大丈夫でした」
 「そうか」
 きっと食べたら、あの頃、貰ったおかしのようにやさしい甘い味がするのだろう。
 後でコーヒーと一緒に食べようと、机の隅に置いた。
 「兄さん、Trick or treat?」
 「おかしなんて、あるわけないだろう」
 どこか楽しそうに言うトーマに、少々悪い気がしながらもそう答えた。
 ないものはないのだ。
 大体、今日がハロウィンだってことすら、失念していたのだから。

 「Trick or kiss」

 今度はそう聞かれて、
 「仕方がないな」
 と、小さく呟いた。


 END

  


急ごしらえハロウィン企画っ!!
しかも、第2段…。
風邪引きで寝込んでいるはにわへプレゼント。
ゾイドで、トーマ×カール。
糖度高いです…。急ごしらえハロウィン企画っ!!
2006.11.2 かきじゅん