夏祭りと冒険の続き
  
 
 

 「お姉さん、うまい焼きそば焼けてるよ!」
 「やだ、太一ちゃんったら。お姉さんだなんて」
 ――あくまでさりげなく、焼きそばを焼きながら話しかけ、おばちゃんを手玉にとる話術が見事だ。
 俺はある意味感心して、ある意味苛立っていた。
 今日は団地の夏祭りだ。
 太一も、手伝いに駆り出されたのだろう。ジーンズにタンクトップ。その上には祭の文字の入った半被を着て、頭にはタオルを土建屋のように巻いていた。
 しかも、それがめちゃめちゃ似合っていて、いつもより数倍カッコイイ。
 人なつっこい笑みは昔から変わらないけれど、顔は精悍な大人の男になってきている。まだ、発展途上であるけれども…。
 「がんばってるんだな」
 見ているだけなのもなんだし、せっかくだからと屋台に歩み寄り、声をかけた。
 「ヤマト!」
 顔をくしゃくしゃにして喜ぶ太一をみると、さっきの苛立ちはどこへやら。現金なものだと、自分で苦笑しながらも、惚れた弱みと自分に言い訳をした。
 「とりあえずひとつ…な」
 「おう!がんばってるっていってもな。今日のがんばりいかんでは、小遣いに響くんだよ」
 返事は威勢良く、後半は小声でささやいた太一に、ぷっと俺は吹き出した。
 太一らしい理由だ。
 「それに、外で料理するって、向こうみたいで楽しいじゃんか」
 ニヤッと笑うと、向こう――デジモンワールドで冒険していた頃と、何らかわりがない。
 「かもな」
 俺もニヤリと笑い返して、この場にカブモンやアグモンがいたら…。きっと、もっと楽しいのに。と、向こうの世界に思いをはせた。
 「祭りが終わったらさ、焼きそば持って行ってみようぜ」
 同じことを考えていたらしい。太一そう言って。俺は、
 「あぁ。そうだな」
と、頷いた。
 
 
 
 
 
 俺たちのあの夏の冒険は、あの夏限りじゃなくて。
 
 ――ずっと。

 ―――ずっと、続いていく。
 
 
 

 END

 

 


ウェブ拍手小説でした。
2010年5月6日に入れ替えいたしました。

かきじゅん

2010.8.6 小説ページに再見