その後の小リラックマ青樺とバレンタイン
「しえーけー!」
屋敷に帰ると、ブンブンと大きくてを振って出迎えてくれる人がいる。
史鋭慶は、いつ見てもかわいいと内心ガッツポーズをしながら、顔はポーカーフェイスのまま帰宅するのが常だ。
「おかえり、史鋭慶」
「…ただいま」
謎のくまのきぐるみを着た暗殺者・李ラックマ暫嶺が拾ってきたのが縁ですっかり史鋭慶に懐き、この屋敷に住み着いた小リラックマ青樺が、反乱軍を率いる神童であり、総大将でもある陶青樺であるという記憶を取り戻してから数ヶ月。季節は一番寒さの厳しい2月となっていた。
「あぁ、帰ったのか?」
青樺の後ろから、件のいまだに謎のくまのきぐるみを着た李ラックマ暫嶺が現れ、
「今日は寒かっただろう。風呂が沸いている。先に入ってくるといい」
と言い残して、また去っていった。
有能な男なのに、何故いつまでもくまのきぐるみ(背中のチャックから除くのは迷彩柄だ)を着ているのか史鋭慶にはやはり理解できないので、取りあえず理解しないことにしている。
見てくれさえ気にしなければ使える男なのだ。
なにはともあれ、記憶が戻ったのだから、普通の格好で過ごせばいいのに、青樺も数ヶ月間着用しつづけたくまのきぐるみ(こちらは白いくまだ)に愛着があるのか、時折、小リラックマ青樺の時と同じ格好で屋敷の中をうろうろしている日がある。ちなみに、今日もそんな気分だったのか、白のくまのきぐるみを着ていた。
「あのね、しえーけ」
ちなみに、それを着ると言葉と行動が恐ろしく幼児化するらしく、青樺は無意識のうちにかわいらしく首をかしげた。
「なんだ」
「これ、李ラックマ暫嶺と作ったんだ。西域の方では、今日は大切な人にプレゼントを贈る日だって聞いたから…」
後半は恥ずかしくてモゴモゴと口篭もって、顔を真っ赤にしながら差し出したのは、水仙の花束。
それから、少し歪で小さな胡麻団子。
一生懸命作ったのだろう。形が丸くなかったり、大きさもバラバラの胡麻団子を史鋭慶はひとつ、頬張った。口の中に、懐かしい素朴な味が広がった。
「おいしい?」
「あぁ」
「よかった」
ホッとしたように、それから心の底からうれしそうに微笑む青樺に、史鋭慶は自然と微笑んでいた。
END
拍手小説でした。
2008年8月13日に入れ替えいたしました。
すっかり再アップするの忘れてました。やけに長い年月かかってるな・・・。
2008.10.22 小説ページに再見