夏祭りと天の邪鬼な我儘
「器用なものだな」
「男の浴衣なんて、簡単なものだぞ」
ウキウキとセバスチャンに浴衣を着せ、帯をしめながらデイビッドは笑った。
一昨日、「夏祭りに行こう」と、誘いに来たデイビッドに「浴衣を作って、着せてくれるなら」とセバスチャンは無理難題を押しつけた。絶対無理だろうと踏んでいたセバスチャンの想像を裏切り、「おやすいご用だ」と軽いノリで返されていまい、今に至る。
「よし、OKだ」
きゅっと帯を整え、デイビッドは満足げに微笑んだ。
紺色のごくごくオーソドックスな色と風合いの浴衣は、当たり前だけれども、セバスチャンにぴったりあうように作られていた。
ミシンではなく、きちんと和裁……ようするに手縫いで縫われており、通常の業務のほかに雑多な雑用のまで任せているというのに、よくできたものだと感心する。
「…お前は着ないのか?」
「俺は甚平で行くさ。さすがに2着は作れなかったからな」
下駄を準備していたデイビッドは、肩を竦めて苦笑した。
セバスチャンをソファに腰掛けさせて、下駄を素足に履かせてみて、鼻緒の調節を行う。鼻緒の調節をするために、屈んでいたデイビッドがふいに前屈みになって倒れ込んだ。
「おいっ!デイビッド……って、寝てるのか」
焦ったセバスチャンはのぞきこんで、最後は小さく呟いて苦笑した。
「起きろよ、デイビッド。誘ったのはお前だろう?」
つんつんと頬をつつくがデイビッドは幸せそうな顔で、セバスチャンの膝に頭を預けて爆睡モードだ。
セバスチャンはとろけそうな笑顔で、そんなデイビッドを見つめていた。しかしそれをデイビッドが見ることはなく…。
「ま。俺はお前がいればどこだっていいんたけど……な」
囁きは小さく、滑り落ちて。
あどけない寝顔に、キスをひとつ。
END
ウェブ拍手小説でした。
2010年5月6日に入れ替えいたしました。
かきじゅん
2011.1.27 小説ページに再見(忘れてました、すいません・・・byあきな)