チェリースイート・キス



 
 「めずらしいですね」
 部屋に入るなり、開口一番がこの発言だった。
 ほんの少し足を止めて、セバスチャンはユーゼフを見た。
 「ああ」
 ユーゼフはセバスチャンの視線の先にあるものに気が付いて、肩をすくめた。
 「キャプテンブラック・チェリースイート…ですか」
 セバスチャンは書類を差し出した。
 「ちょっと、なつかしくなってね」
 アメリカンチェリーと同じ、深みのあるワインレッドのパッケージの煙草。隣には、趣味のいいクリスタルの灰皿が置かれていた。
 甘い、チェリーの煙草のにおい。ユーゼフはゆっくりと立ち上る紫煙を見ていた。
 「書類、できたの?」
 書類を丁寧に並べているセバスチャンに、ちらりと視線をやる。真面目に仕事をしているセバスチャンのストイックな横顔に、ちらりと悪戯してみたい衝動にかられる。
 「ええ。これと…。あと、前回の分がこちらになります」
 書類から、顔を上げようとしたセバスチャンの腕を掴んで引き寄せた。
 「ユー…!?」
 突然のキス。
 吃驚しているセバスチャンの顔を見て、しばし楽しむ。
 ぬるりと舌を入れて、縦横無尽にむさぼった。濡れた音が、執務室に響いた。
 「…甘い」
 開口一番、そう言ったセバスチャンに、ユーゼフはくすくすと笑った。
 「お気に召さなかったかな?」
 この煙草で何が気に入っているかと言うと、吸った後に唇に甘い味がつくのだ。
 セバスチャンは、ふっと、花の蕾が綻ぶ様に笑った。
 「いえ」
 セバスチャンはゆっくりと、今度は自分から身を屈めた。
 それは、甘いチェリーの香りのキス…。


 END


  


あとがき

 甘っっ!自分で書いて、びっくりの糖度です。
 うちの職場、なぜかタバコの自動販売機がもちろん外ですが、設置してあります。売ってますよ、キャプテンブラック。意外と買う人が多いみたいです。
 職場の人は「好奇心で買ったけど、口に合わない」といって、くれました。吸ったけど、私もいまいち…。
 でも、キャプテンブラック・チェリースイートの火をつけていないときの香りはとてもいいです。箱に顔を突っ込んで、タバコの担当の人とにおいをかぎまくったことも…。
 ちなみに、キャプテンブラックは、吸うと本当に唇が甘くなります…。

06.7.27 かきじゅん