手紙




 ――お元気ですか?

 そう、手紙を書き出す。



 ――私は、元気でやっています。

 さて、何を書こうかとペンを持ったまま悩む。



 言いたいことはたくさんあって……。
 でも、言葉にならない。

 私たちより命が短いのに。
 本当に、私たちの寿命から考えれば、一瞬ぐらいの時間の長さしか生きられない命なのに。

 強く――。
 そして太く生きた人。


 リナ・インバース。


 「フィリア」
 名を呼ばれて、振り返った。
 「もうそんな時間?」
 「あぁ」
 少し不機嫌な声。
 何をもたついてるのだと、不機嫌な顔に書いてある。
 「わかったわ」
 「早くしろよ」
 「えぇ」
 音も立てずに気配が遠ざかり、手紙はまた今度の機会にしようと思う。書いたところで、受け取るはずの人はもう、かなりの昔に亡くなってしまっているのだから。

 ローブを着て、帽子をかぶると、彼女と一緒に旅をしていた頃と、そう変らない自分がいた。
 「あの子は大きくなったというのにね…」
 くすくすと、ひとしきり笑い、私はペンをとった。



 ――リナさん、今ではすっかりあの子も大きくなったのよ。私が見上げなきゃいけないぐらいに。



 「フィリア!」
 「今行くわ、ヴァルガーヴ」



 ――続きは、また今度書くわ。彼が呼んでいるから。

 窓から入った風が、便箋を揺らした。
 それはまるで、「しかたないわね」と彼女が言っているようだった。


 END

  


後書き
ホントは絵で描いた方がいいのかもしれませんが、無理なんで小説で勘弁して下さい。
リナの死後ですが、大きくなったヴァルガーヴとフィリアです。
彼女はなくなってもなお、人の心に大きな存在を残して去っていくタイプの人だと思うのです。
2007,10,27  かきじゅん