センチメンタル・ミリメートル
  (戦う執事/ユーゼフ×セバスチャン)

 序章

 コツン、と規則正しい靴音が止まった。
 あえて振り返らなくても、誰が来たのかぐらいはわかる。…セバスチャンだ。
 「ユーゼフ様」
 「それで、どうなったのかな?」
 読んでいた新聞から顔も上げずに、単刀直入に、そしておそらくセバスチャンが言いに来たであろうことを問い掛けた。
 「滞りなく、処理させていただきました。お心を煩わせたようで、申し訳ございません」
 衣擦れの音がして、沈黙がおりた。
 「……まぁ、セバスチャンが悪いわけじゃないからね」
 ふぅ…。と溜息をつき、新聞から顔を揚げると同時に、セバスチャンも深く下げていた顔を上げた。
 視線をやると、キリリとしたセバスチャンの美しい立ち姿。本人の意思に関係なく、その姿は見る人を魅了する。
 「そういえば、ユーゼフ様。例のブツ、取り寄せの手配が完了しました。近日中にはこちらに届く手はずになっています」
 淡々と話すセバスチャンに視線をもう一度やった。
 「ああ、ありがとう」
 ……あいからわず、隙の無い男だ。
 ユーゼフはその身を再びイスにもたせかけた。
 その凛としたたたずまい。意思の強い瞳。そして、あでやかな振る舞いはいたる所で人を魅了する。
 だが、さすがはフラン○フルト一の富豪、デーデマン家につかえる年若き執事だけあり、一分の隙もない。
 ……一度、自分の下で泣かせてみたいものだ。
 サディストのユーゼフは心中でクツクツと笑った。
 「今日はずいぶんと機嫌がよろしいのですね」
 それを知ってかしら知らずか、勝手知ったる他人の部屋で、紅茶を入れていたセバスチャンが紅茶を優雅な手つきでいれ、ユーゼフの前に置いた。
 「ああ、ありがとう。……そうみえるかい?」
 礼を言って、ユーゼフは紅茶の香りを堪能し、ふとセバスチャンを見た。
 セバスチャンは自分で入れた紅茶を一口飲んで、そっけなくいった。
 「あなたの機嫌のよし悪しぐらいであれば」
 「君がきて、もうだいぶたつしねぇ…」
 ユーゼフは、「ああ、面白いことを思いついた」と小さくつぶやいた。
 セバスチャンは、微かに聞こえたその言葉に眉をひそめたが、すぐにいつものポーカーフェイスに戻った。
 知っているようで知らない、近いようで近くないのがこの2人の距離。
 セバスチャンはユーゼフの言葉を聞いてはいたが、聞かなかったことにし、ユーゼフはセバスチャンの一瞬の表情の変化も見取っていたが、特に聞きもしなかった。


  


戦うセバスチャン、連載小説もどき開始です。
このサイト、どんどんジャンルがマニアックになってないか?姉よ・・・。
続くと書いてあるからには、頑張ってもらいましょう!
ちなみにこの小説→じゅんです。