些細な違和感



 
 「お疲れ様です」
 「おかえり、B君」
 いつものように買い物を頼んで、いつものように彼が帰ってきて、いつものように微笑んでいるのに、ほんの少し違和感…。
 なんだろう…。と、デイビットは訝しげに首をかしげた。
 「たまごと、にら…。肉と…」
 そんなデイビットを気にすることもなく、Bはいつものように買い物メモと買ってきたものを、照らし合わせながら確認していた。
 そんなBにデイビットは、てっとり早く違和感の正体を突き止めるべく、後ろから
 抱きついた。
 「うわ!」
 「……なんか違うんだよなぁ」
 しかし、その違和感の正体がなんなのかわからなくて、デイビットは再び首をかしげた。
 「ちょっ!?デイビットさんっ!!」
 当然だが、Bはわけがわからずにデイビットに抱きしめられ、ニラを持ったままジタバタと暴れていた。
 頬を染めて暴れる様がかわいらしく、デイビットはBの頬にキスを一つ落とした。
 その時、さわりと揺れる髪のにおいが、いつもと違うことに気が付く。
 「たばこのにおい…?」
 「は…?」
 「B君、煙草を吸うのか?」
 いきなりえらい剣幕で聞かれて、一瞬何事かとおもったBだが、我に返ってみればたいしたことではない。
 「っていうか、知らなかったんですかっ!?」
 「てっきり、この屋敷はだれも吸わないのかと…」
 ニラを持ったままBは振り返った。
 「こんな屋敷で勤めていたら、煙草の一本や二本。酒の一升や二升ぐらい飲みたくなりますよ!?」
 力説するBに、デイビットは押されていた。
 「そうなのか…?」
 「そうですよ」
 Bはニラを持ったまま、うんうんと頷いた。
 「B君。ニラがへたってしまう」
 デイビットはBに振り回されていた、哀れなニラに気が付いた。
 「あ…」
 Bは気まずげに、そっとニラをテーブルに置いた。
 「すいません、デイビットさん…」
 「いや。俺がちょっかい出したのが悪いわけだし、コレぐらいなら大丈夫!」
 デイビットがにっこり笑って、Bもほっとした様子で微笑んだ。
 「今日だけ、どうして匂いが違うんだ?」
 デイビットはBの髪に顔をうずめた。
 「いつのまにか、新しいのが出ていたので、ためしに買ってみたんですよ」
 Bは、くすぐったそうに首をちぢこませながら、こともなげに言った。
 「普段は?」
 「ハイライト」
 「また、渋いなぁ…」
 デイビットは、あいからわず抱きしめたままの体勢で、匂いをかいでいた。
 「そんなに気になります?」
 「そりゃ、B君のことだからな」
 耳朶にキスをひとつ。



 だって、好きな人のことだから、些細な違和感でも気になる。そんなもんだろう?


 END

 

  


あとがき

煙草ネタ第4段!
B君が吸っていたのは、ハイライトのラム・メンソール。火のついていないときの、
ラムの甘いにおいが好き…。
とりあえず、勝手にキャラ別に煙草を設定してみたこのネタも、一通り終わったので
終了です。
お付き合いいただき、ありがとうございました。



06.8.17 かきじゅん