李ラックマ番外編
小リラックマ青樺とサンタクロース
「よし、いいぞ」
「わ〜い。ありがとう!李ラックマ暫嶺」
記憶が戻ったというのに、時折どうしようも手が付けられなくなるほど子ども返り……もとい、小リラックマ化してしまう実は成人男性の陶青樺は、本業は反乱軍の大将である。
ほぼ、陶青樺率いる反乱軍である青軍が、この国のトップである陳王高軍に勝利するのはもはや確実という情勢ではあるが、こんな和やかに過ごして良いはずがない。
いいはずがないが、もはや一種の青樺にとってのリラクゼーションか、青軍のレクリエーションか……。時折、小リラックマ化する青樺に、かわいらしいくまの着ぐるみを着せ、皆でそれを愛でる……という謎の習慣が青軍内に出来つつあった。
「お。今日はまた変わった服だな」
「うん。サンタクロースの格好なの」
ふいに現れた元堅は、その姿に眼を細め、子供にするかのようにぐりぐりと青樺の頭を撫でた。
青樺は「えへへ」と笑った。そうやってかまわれるのが嬉しいらしい。
青樺はいつもの白いくまの着ぐるみの上から、さらに白いぼんぼんがついた赤い三角帽子。白いふわふわのファーをあしらった赤い服を装着していた。
「良い仕事をしたな」
後ろからやって来た貴沙烙が、グッジョブッ!と、李ラックマ暫嶺に親指を立てた。
「ええ、本当に」
李ラックマ暫嶺は、キラリと汗を飛ばしながら満足げに微笑んだ。
騒ぎを聞きつけて、わらわらとやってきた青軍兵士たちも、戦いの時は頼りになる大将のかわいらしい姿を見て、相好を崩していた。
「あ、醜塊〜」
ちなみに、ふだんは案外慎み深い青樺ではあるが、小リラックマ青樺になると遠慮も照れも戸惑いも、きれいさっぱりなくなる。そのため、
「醜塊〜v」
「ぐは」
その騒ぎを見ながらも、通り過ぎようとした醜塊は、笑顔の小リラックマ青樺にタックルをかけられ、ぐりぐりと懐かれるハメになるのだ。
周りには「いいな〜。俺も大将に抱きつかれてぐりぐりされてぇ…」と、うらやましそうに見つめる青軍兵士たちが、わんさといるわけであるが、小リラックマ青樺は気にしない。
「ね。かわいい?」
「……か…かわいい」
照れながらも、頷く醜塊に、「えへ」と小リラックマ青樺は微笑んだ。
醜塊と青樺が、ほのぼのオーラを放っている頃、何の騒ぎかと様子を見に来た史鋭慶は、眉をひそめ、李ラックマ暫嶺へとつめよった。
「なんのさわぎだ?」
「青樺だよ。ほら」
答えたのは、李ラックマ暫嶺ではなく、貴沙烙の方で、いささかムッとしたものの史鋭慶は貴沙烙の視線の先に目を向けた。
「……あぁ」
思わず、この騒ぎも納得……と、頷いてしまう史鋭慶であったが、醜塊と青樺のほのぼのオーラには、やっぱりちょびっと腹が立った。
それでなくても、眼に入れても痛くないほどかわいい青樺のためだけに、こんな敵陣に留まっている史鋭慶は、その青樺が。小リラックマ化している青樺に他意はないとはわかっていても、誰かと仲良くしているのはムカムカしてしまうのであった。
「……良い仕事をしたと思わないか」
そんな史鋭慶の心を知ってかしらずか。どうせ、確信犯だろうけども……。李ラックマ暫嶺はそれはそれは、とてもさわやかにのたまった。
「お前の仕業か」
史鋭慶は、冷たい眼で李ラックマ暫嶺を一瞥した。普通の人であれば、凍り付くような凍てつく視線をモノともせず、李ラックマ暫嶺は、口元に笑みを浮かべた。
「クリスマスというイベントに、子供にプレゼントを配るサンタクロースの衣装だ。女性が着るためのミニスカートバージョンも作ったんだが……」
「良い仕事をしたな」
史鋭慶は、左手で顔を覆い、右手はグッジョブッ!と、親指を立てた。
左手で顔を覆っているのは、素面の青樺にミニスカサンタを着せて、恥じらう様をうっかり想像してしまい、やばいことになりそうだったからだ。
「あ。しえーけ」
ふと、大好きな史鋭慶を見つけた青樺が、ぱぁっと顔を綻ばせた。
だーっと一目散に史鋭慶のところにかけてきて、ぎゅっと史鋭慶に抱きついた。
「しえーけ!今日はサンタクロースなの」
キラッキラの笑顔で、青樺は史鋭慶を見上げた。史鋭慶は、そのキラッキラの笑顔をまぶしそうに見つめ、ふわりと青樺を抱き上げた。
「そうか。よかったな」
「うんっ!」
大好きな史鋭慶に、抱き上げてもらって。
よかったな。って、言ってもらえて、青樺はそれはそれは、とても嬉しそうに頷いた。
その顔を見た青軍兵士たちは、『ちくしょう、史鋭慶め。うらやましいぜ…』と、思う反面、『大将が幸せならそれでいいんだけどさ。あぁ、しかしなんてかわいいんだ、大将…』と、醜塊のときと比べものにならない気ぐらい、パステルピンクのオーラを出しまくっている史鋭慶と青樺を遠巻きに見ていた。
後日。
李ラックマ暫嶺と史鋭慶がコソコソ話していたミニスカサンタの衣装について、青樺が本当に着たかどうかを確かめようとしたチャレンジャーがいたらしいが、すべて史鋭慶と李ラックマ暫嶺に返り討ちにあった……らしい。
おわり。
あとがき
ついに醜塊が李ラックマシリーズに登場です!
ですがクリスマスすぎました・・・。気にしない・・・。気にしない・・・。
2008.12.29 かきじゅん
2009.3.14 NOVELに再アップ