どなんことがあっても、おもわず顔が綻んでしまう場所。



 それは、大好きなひとのそば――。







 
閣下と子猫の昼下がり







 「めぇめぇ」
 か細い鳴き声に、ユーリは耳を澄ました。
 「え〜と…。やぎじゃなくて、猫の鳴き声だよな」
 眞魔国と生まれ育った地球とでは、動物の姿が一緒でも鳴き声が違ったりして、ほんのちょびっとややこしい。
 執務の休憩をグウェンダルにもらって、ユーリは息抜きがてら血盟城の中庭に来ていた。本当は、休憩の許可はもらったものの、外出許可は出ていないので、見つかると大目玉を食らう……ハズ……。
 早く戻らないと。とは思うものの、ついつい興味がひかれ、声のする方へと、ユーリは足を向けた。
 「わ…」
 「めぇめぇめぇ」
 声のする方に近づくと、子猫が1匹。
 ふわふわの毛玉みたいだと、ユーリは思わず思った。
 「にゃ…じゃなかった。めぇめぇ。おいで」
 しゃがみこんで、指を一本差し出すと、興味をそそられたのか、
 「めぇめぇ」
と、鳴きながらユーリのほうへと寄ってきた。
 「めぇ」
 一本だけ出された指の先に、鼻を押しつけてくる子猫の姿は、鳴き声は違えど、向こうもこっちも変わらない。
 「いい子だな。おいで」
 「めぇ」
 抱き上げてもいやがらずに、手のひらほどの大きさの子猫はユーリの腕の中へと収まった。
 「お前だけなのか?」
 「めぇ」
 「そっか」
 まだ肌寒い季節だ。ユーリはそっと子猫を抱いたまま、日なたへと移動した。
 「ここならあたたかいから」
 ユーリが子猫に笑ってみせると、子猫はユーリの手をぺろりとなめた。
 「インクがついてるだけだから、うまくはないぞ」
 「めぇ」
 「わかってんのかな…」
 ユーリは笑って、ふわふわの子猫を撫でた。
 ぽかぽかのお日様と、あたたかい子猫の体温がユーリを眠りの世界へと誘うのには、そう長くはかからなかった。





 「ったく…」
 抜け出したと思ったら、こんなところで寝ているのかと、怒鳴り起こしてやろうと思っていた。
 しかし、こんなにすやすやと。気持ちよさそうに、腹に子猫を乗せて寝られていては…。
 グウェンダルは大きくため息をついて、ユーリの隣に座った。
 「めぇ」
 子猫がグウェンダルに気がついて、うっすら起きたが、ユーリは起きる気配もない。グウェンダルが子猫の首をかいてやると、子猫は気持ちよさそうに眼を細め、また寝てしまった。
 「この新米陛下は全く…」
 そう言った声だけは苦々しく。しかし、グウェンダルの顔は、思わず綻んでしまう。
 「起きたら、しっかり執務をこなしてもらうから、覚悟しておけ。ユーリ」
 愛しい魔王の額にキスを落とし、グウェンダルは低く、そう囁いた。


 END



あとがき
 はにコネ3周年企画ということで、小説はテーマを決めて書かせて頂きました。
 今回は「大好きなひとのそば」。
なぜか私のネタ帳に、「ねこと昼寝するユーリ、グウェンダルが来る」とか書いてありまして。たぶん、仕事で行った利用者さんのお家の猫がたいそう可愛かったからだと思いますが…。もしくは、まるマのコミックスのねこちゃんがかわいかったのでしょう。グウェンの必死さもほほえましかったですし。
2009.2.25 かきじゅん

2009.3.24 NOVELに再アップ。