生まれ育ったこの世界も。

必要とされている向こうの世界も。


どちらも凄く大切で、どちらも俺の帰るべき場所。



帰路



「うひゃぁ」
ポツンと、突然薄暗くなった空から冷たい雨粒が首筋に落ちて、俺は情けない声をあげた。
所々で稲光が走る空を見上げて、雷雨だなと気持ちは焦る。
ベダルをこぐ足に力を入れて、しゃかりきに漕ぎ出したのもつかの間、バケツをひっくり返したような雨に見舞われた。

いっそ、濡れるんだったらこのままスタツアしてくれたらいいのに。
そんなこともちらっと頭をよぎった。
いつも俺が向こうに行くためには、水を介して帰るから。

でも、今スタツアするとなると自転車ごとスタツアか…。
それはちょっと嫌かも。
絶対、アニシナさんに実験道具にされてしまう。

いろんな想像をして、その想像の恐ろしさにブルリと頭を振った。

毒女の影響は地球に戻っても、バッチリ健在だ。

大きな水溜りを避けて、おおきくペダルを踏み込む。
雨脚が弱くなってきた。
こんなにすぐやむなら、雨宿りでもすればよかったとほんの少し後悔した。



ゴロゴロという音が遠くなり、雲の切れ間から光がさす。

今日の夜はきっと、名付け親の瞳の中の星のような、澄んだ星空が見えるだろう。

そして俺は思い巡らすのだ。

大好きな、名付け親に会えるその瞬間を。

眞魔国への、帰路が開くときについて――。





END

 


あとがき
「はい、ごちそうさまです。雨上がりの空はきれいですからね。存分にひたってくださいよ、コンラッド氏とのめくるめく日々に」って、感じですね。
なんにせよ、居場所がないと嘆く現代っ子が多い中で、しっかりと支えてもらえる人がたくさんいて、そのことに感謝のできる素直なユーリってのが、ぐりぐりしたい勢いでかわいかったりするわけなんですよ。
しかし、コミックスのコンラッドはエロいよなぁ…(今回の話と関係ない)。
2007.12.28かきじゅん