きっと、そんな日々。



 
 ゆっくり、手触りのいい漆黒の髪を好くのが好きだ。
 さらさらと額に落ちた髪をかきあげると、すっと通った鼻筋。今は見れないけれど、キレイなブルートパーズの瞳。
 「愛しててる、ハニー」
 そっと、眠るセバスチャンの髪にキスを落とした。



 ――きっと、そんな日々。



 「ハニーの髪は、ホント、キレイだな」
 デイビットは風呂上りの濡れたセバスチャンの髪を、丁寧に拭いていた。
 セバスチャンは、毎回ボタボタと水滴を垂らしながら、ろくに髪も拭かずに出てくる。見かねたデイビットが髪を拭くようになり、最近はトリートメントまでしているので、セバスチャンの髪はいつにもまして艶々になっていた。
 「寝ないでくれよ」
 「ん…」
 デイビットは舟をこぎ始めたセバスチャンに苦笑しながら、オイルを手にとった。
 オレンジの香りのするオイルは、最近よくみかけるようになった洗い流さないトリートメント。ごく少量を手にとって、薄く髪になじませていく。
 つるんっと纏まる、濡れている髪も好きだ。
 でも、やはり乾いているサラサラの髪が好きだな。そんなことを考えながら、デイビットはドライヤーを持った。
 ブオォォォ…。
 モーター音がして、暖かい風が出る。
 指の腹でわしゃわしゃと頭皮をこすると、気持ちよさそうに目をつぶる。
 ドライヤーの風に乗って、オレンジのオイルの香りと、シャンプーの香りと、石鹸の香りがする。そのひとつひとつがセバスチャンと混ざり合っていて、そのどれもがいとおしく感じる。
 「ハニー、終わったぞ」
 「ん」
 ドライヤーを止めて、既に半分以上夢の中にいる愛しい人へ、キスをする。寝ぼけている時のセバスチャンはかわいい。
 「連れてって」
 「…了解」
 かわいいが、無自覚で時々過激。
 そんなセバスチャンに振り回される。きっと、そんな日々がずっと続くだろう。
 でも、デイビットはとっても幸せで。愛する人のそばにいつづけられること以上に、どんな幸せがあるというのだろう。
 「おやすみ。いい夢を…」
 そっと、セバスチャンをベットに降ろし、額にキスを落とす。
 と、ぐっと引っ張られて、ベットに引きずりこまられる。
 「ちょっ…!ハニー」
 「つべこべ言わずに寝ろ」
 今日も今日とて、セバスチャンの寝室からはどたばたと音がする。
 
 それでも、彼らはきっと幸せ。

 きっと、そんな日々。


 END
 

  


あとがき

 デビセバの裏を書こうと思ったら、気がついたら表になっていました。しかも甘い…。
 次は裏書くか…。
 
06.9.29 かきじゅん