友達としゃべりながら帰り支度をしていると、突然教室のドアが開いて先生が入ってきた。
 「菜ノ花!」
 「ん?」
 呼ばれて振り返ったのは、ぽちゃぽちゃのぷりんぷりんのぼんぼ〜んの少女、菜ノ花自由。
 「あっ、先生どうしたんですか?」
 先生は自由の机までいくと紙をぺらぺらと見せる。
 「後お前だけだぞ。進路希望の紙を出してないのは」
 「あっ・・・」
 その瞬間自由はまずいと言う顔をする。
 横から「なんや、じゅうべえ。まだだしてへんかんたんか」と友達のまろがちゃちゃいれてくる。
 「今週中には出してくれよな。高校に進学するにも願書をださなきゃならんしな。わかったな、菜ノ花」
 自由が罰を悪そうに「はい」と頷いた。


 進路という名の迷い道 


 「進路・・・か・・・」
 自転車を引きながらフリーシャと帰路について、自分なりに考えてみる。
 考えて考えてもいまいち漠然としてて、思いつかない。
 自由は渋い顔をしながら再び呟いた。
 「自由」
 横からフリーシャが声をかける。
 「どうしたの、フリーシャ」
 フリーシャは自由を指さして、
 「進路、まだ悩んでる?」
 と言った。
 「ははは・・・。私、もしかして声に出してた?」
 「でてましたとも!」
 なんか前にもこんなことがあったな。と自由は苦笑する。
 「フリーシャは進路希望出した?」
 「カニェーシナ!」(もちろん)
 「そっか。フリーシャはどんな進路なの?」
 自由がきくとフリーシャは笑って「ひみつだよ」と言った。
 「え・・・」
 「それじゃあ自由。わたし先いくね」
 言い終わると同時にフリーシャはかけだした。
 「あっ、フリーシャ」
 声をかける暇もなく、フリーシャはどんどん自由から離れていく。最後に「今日の晩ご飯は私が作ってあげる」と言い残して。
 気を遣ってくれているのは分かっているが、なんだかとても寂しくなった。
 「なんか、置いていかれた気分・・・」
 呟いた後、気を取り直して歩き出した。
 そして・・・。



 「迷った」



 自由は進路にも道にも迷った。
 「なんでこう、迷うかなー」
 竹林を歩きながらぼやく。
 そして、思う。
 ・・・懐かしいな。
 鯉之助にも鮎之助にも出会ったのはこの竹林で迷った時だった。そしてラブリー眼帯で二代目柳生十兵衛に変身して、色々あった。たくさん悩んで、パパやいろんな人も巻き込んで・・・。
 『失敗したら、何度でもやり直せ』
 迷い道に入った娘に父・菜ノ花彩はそういった。
 そうして私は・・・。
 『我こそは二代目柳生十兵衛菜ノ花自由』
 鮎之助を抱きしめ、ラブリー眼帯をつけ、柳生十兵衛になってもう一度戦った。
 あの時を思い出すように、自由は静かに目を閉じた。
 あの時決めたもう一つの進路を思い出すように。
 
 「たく、なんで竹林の中に家があるんだよ」
 竹林の中を自転車を引きながら悪態をついて歩くもう一つの影があった。
 柳生喜多歩朗である。
 彼は今、郵便局の配達の仕事をしていて、配達帰りだった。 
 「ん、あれは・・・」
 その途中に一つの影を見つけ茂みから隠れてみると、見覚えのある少女が佇んでいた。
 「二代目十兵衛殿・・・えっと、じゅうべえちゃんじゃないですか。お久しぶりです」
 喜多歩朗は声をかける。
 「あっ、喜多歩朗さん」
 自由が驚いたように振り返る。そこには郵便局の制服を身にまとった喜多歩朗が自由を見ていた。
 「あれ、喜多歩朗さんも迷ったの?」
 「いや、竜乗寺って家へ郵便物の配達の帰りさ。じゅうべえちゃんは迷ったのか?」
 自由「ははは・・・」と苦笑した。
 喜多歩朗は微笑むと、
 「どうせ俺も・・・いや私は配達帰りなので途中まで案内しますよ」
 親切に言ってくれた。
 自由は「面目ござらん」といいながら二人は肩を並べて帰路につく。
 「喜多歩朗さん。サングラスとったんですね」
 「ああ。もう必要ないしな」
 喜多歩朗は頭をかきながらぶっきらぼうに言う。
 「ふーん・・・」
 自由はそう言って喜多歩朗の顔を覗き込む。
 喜多歩朗は横目で自由を見て「どうしたんですか」と言う。
 「うん」
 自由は頷く。
 喜多歩朗は訳が分からず立ち止まる。
 自由は喜多歩朗の見えない目に触れる。
 「あっ・・・」
 喜多歩朗は驚いて顔を赤くする。自由はそんな喜多歩朗はお構いなしにひとりで頷く。
 「うん、そっちの方が良い。うん」
 「へ・・・」
 「喜多歩朗さんはサングラスよりそっちの方がいいよ、絶対!うん、間違いないよ」
 自由はひとりでさらにうんうん頷く。
 そして思い出したように聞いてみる。
 「喜多歩朗さんは進路どうする?」
 「進路?」
 聞き直すと、
 「そう、進路」
と自由の屈託のない笑顔が返ってくる。
 「俺は学校とか言ってないから参考にはならないと思うぞ・・・」
 喜多歩朗の言葉に、自由は「それでも聞きたい」とねだる。喜多歩朗は苦笑すると目を閉じて、少し考えて見る。考えてみると、自分の人生がいかにちっぽけだったかと胸に刺さる。そうしたとき、ふと二代目柳生十兵衛と初代柳生十兵衛の剣を思い出した。そして父・喜多烈齋が生み出した秘剣。そして消えていく仲間達・・・。そして・・・。
 「・・・俺は300年がとにかく長くて、寒くて、辛かった。今はじゅうべえちゃん、二代目柳生十兵衛殿に切っていただいて今の俺がいる。正直親父やみんなに置いていかれたのは辛かった。それはとっさんもそうだろうが、最近逆にとってみた」
 「うんうん」
 「親父達は・・・親父達と二代目柳生十兵衛殿は俺にもう一度チャンスをくれたんだって。俺自身何がしたいとか決まったわけじゃないが、わかっているのは親父達に笑われないように精一杯生きると言うことさ」
 そう言って自由にほほえみかける。
 「それにここには二代目柳生十兵衛殿がいるから」
 「私・・・!?」
 困ったな。と自由は苦笑する。
 「・・・私はどうしたいんだろう」
 喜多歩朗の話を聞いても、いまいちまだイメージがわかない。
 そんな自由に喜多歩朗は空を見上げていった。
 「答えがないなら普通に進んでみればいいじゃないか。まだそのこうこうってやつに進学するだけだろ。ならやるだけやってみればいいんじゃないか」
 「え・・・」
 「答えがないなら、答えを探すために進めばいいじゃないか」
 喜多歩朗は空に向けていた視線を自由に向けて、笑顔でそう言った。
 「ああ・・・そうか・・・そうだよね。今すぐじゃなくても考える時間はあるんだよね」
 なんか考えまくってそんしちゃったなーと横で呟いた。
 「あっ、これパパ聞いたらなんて言うかなー」
 思い出したように聞く。
 「相談してやれよ」
 二人は途端笑い出して、竹林を抜けるために歩き出した。
 
 数日後。
 「じゅうべえー。進路希望の紙持ってきたんか?」
 元気よくまろが声をかけてきた。
 「うん。ばっちし!」
 自由は笑いかける。
 「早く出せるなら、早く出せ」
 横からさっちゃんが呟く。
 「へへへ、ごめん」
 「ほんまあんたみてるときいぬけるわー」
 まろはそう言うと自由の頭をぐりぐりとする。
 「痛いよ、まろ」
 「ほーら進路希望の紙みせてみいー!」
 そう言うと進路希望の紙を自由からとろうとする。
 「あっ」
 とられまいと自由は立ち上がる。
 そんな二人の攻防を身ながら、さっちゃんは横いるフリーシャに声をかける。
 「フリーシャはだしたのか、進路の紙」
 「カニェーシナ」
 フリーシャは笑顔で答える。
 「そうか」
 さっちゃんも笑った。
 「さっちんも気になるやろ、じゅううべえの進路」
 さっちゃんはさっちんと呼ばれた瞬間、すかさず「さっちんじゃねえ!」と入れる。
 その時予鈴がなり先生が入ってきた。まろは残念そうに渋々自分の席に戻る。
 先生は自由を見るなり、
 「菜ノ花。進路希望の紙は持ってきたか?」
と問う。よほど気にしていたらしい。
 「はい」
 自由は元気よく返事をして、進路希望の紙を提出した。

 END
  
 


すいません。マイナーすぎる。
でも大好きです。十兵衛ちゃん!!十兵衛ちゃん2公式HP
こちらです。
喜多歩朗は私的によかったです〜Vv
ロシア語間違ってたらすいません・・・。
2008.1.10 天神あきな