吐息さえ、盗んでしまいたい。


 全てを、自分のものにしたい。


 その名を、人は狂気と言う。



 
ーー月光ーー



 カーテンの隙間から入る月の光。
 「んっ…」
 幸せな夢でも見ているのか、君は微笑んだ。
 いつもはあげている髪がもサラサラと頬にかかっている。


 ひとすじ。


 ふたすじ。


 そっと髪をすくように、なでるようにかきあげると、あどけない寝顔。

 僕の人生に比べたら、まだほんの少ししか生きていない青年。

 「B君……

 起こしてしまわないように、細心の注意を払って銀色の髪にキスを――。
 
 いとおしくて、いとおしくてたまらない。

 この月の光を浴びて煌めく銀の髪の一筋も。
 白く滑らかな肌も。
 薄く開いた唇も。

 そこから漏れる吐息さえも、夜の闇に盗んでしまいたい。
 
 「ほんの少ししか生きていないのに……
 そして、僕より先に死ぬのに。
 どうして僕は君に焦がれるのだろう……。

 そして、僕は踵を返した。


 「おやすみ


 月光に守られるようにして眠る君に、そう囁いて……。


 END

  


あとがき
ずっと温めていたネタのうちの一つ(笑)。
独占欲の強い男を書くのは好きですよ。みているのもいい。自分の彼氏だったら、絶対イヤだけどね(おい)。
好きだから、全てを奪ってしまいたい…。そんな、月光と狂気がこの話のテーマです。
今回、ユーゼフ氏は思いとどまったようですが、狂気に負ける日がいつか来るかも知れませんね。
2007.7.27 かきじゅん