そんなに頑張らなくたっていいのに…。

 いつもあなたの背中を見るたびに、そう思っていた。

 だから、今日は。
 ハーシーのココアと、星型のマシュマロ、牛乳を買って、ちょこっと待ち伏せ。

 たまには、ホット一息。ついてもいいんじゃないかしら?



 『頑張らないで』



 どさっと、休憩室のイスに座り込んだ。
 疲れて、指一本動かす気力もない。
 あたたかな日差しが、やわらかく全身を包む感覚が心地よかった。

 ふいに、ふわりと漂うカカオの香りに、Bは目を開けた。

 「おつかれさま」

 そう言って、コトンと前に置かれたのはかわいらしいマシュマロの浮いたココア。
 ツネッテは、
 「死にそうな顔をしているわよ」
と、カラリと笑った。
 彼女らしいといえば彼女らしい心遣い。
 心身ともに疲弊している時に、その女の子らしく、やさしい心遣いがうれしい。

 「サンキュー」

 だから、Bはなんとか微笑んで見せて、ゆっくりとココアを啜った。
 あたたかい、やさしい甘さが口の中に広がった。
 「恐いもんは恐いし、やんなきゃいけないコトはいっぱいあるし」
 「……」
 「でもさ。そんなに気を張り詰めて、頑張らなくたっていいんじゃないの?」
 少し心配そうなツネッテの顔。
 「……そう見えるのか」
 「そうね」
 「そうか…」
 あっさり切り返されて、ずるずると机に懐いた。
 「最近、妙に張り詰めていたでしょ」
 「ん…」
 誤魔化すように、ココアを啜った。
 「頑張らないで。Bらしく仕事すればいいんじゃないの?」

 そっと、ほんの少しためらうように伸ばされた手が、ゆっくりとBの髪に触れた。

 「すご〜い。Bの髪って、サラサラしてるのね!」

で。
 上るは黄色い声。

 「ツネッテ…。セットが崩れるんだが」
 「いいじゃない、少しぐらい」

 しかたがないな…。
 Bは、そっと苦笑した。

 気がつけば、肩の力が抜けていた。

 女の子の力は偉大だな…。
 しっとりと頭を撫でられる感触を、Bはいつしか甘受していた。

 頑張らないで。
 ゆっくり、進んでみようかな。
 そう思った、不思議な時間。



 END



  


なんとなく、出来心ですよ。
うん。
B×ツネッテ…?
ほのぼのです。
2006.11.13 かきじゅん