ゆらゆらと、水に浮くような感覚。
キラキラと、目を閉じれば光が揺れた。
まるで、海の中にいるようだと思った。
あなたならかまわない
「ユーゼフ様?…」
情事の後の残るベッドで、セバスチャンは体を起こした。
奇妙な違和感を感じ、情人であるユーゼフの名を呼んだ。
「あぁ、セバスチャン。目が覚めたかい?」
穏やかな声とは裏腹に、その顔に浮かぶ表情は虚無という名の孤独。
情人が、時折どうしようもない虚無と孤独に苛まれることをセバスチャンは知っていた。
それは、本能的に嗅ぎわけているのか、長い付き合いの中で培われたものなのか。
そんなことはわからない。
ユーゼフは口元に笑みを乗せ、ゆっくりとセバスチャンに近づいた。
「そんなに怯えなくてもいいよ」
優しく、手櫛で髪をすかれる。
「怯えてなんかいませんよ」
セバスチャンは、そう肩をすくめていい、ユーゼフを見上げた。
この男が、虚無と孤独にかられて、幾人の情人を殺したのか知らないわけでもない。
また、幾人の情人が、虚無への恐怖にかられこの男を傷つけたのか知らないわけでもない。
それでも、なぜかそばにいたいと思う。
「あなたならかまいません」
あなたなら、殺されてもかまわないと、手を伸ばした。
ユーゼフは一瞬、驚いた顔をして、すぐに笑った。
「君は面白い子だね、セバスチャン――」
ずるりと、精神にユーゼフが入ってくる感じがした。
その瞬間は、嫌悪なのか快楽なのかわからなかった。ただ、得体の知れない異物感があった。
すくい上げられてられているのか。
深淵へとおちているのか。
ゆらゆらと、水に浮くような感覚。
キラキラと、目を閉じれば光が揺れた。
まるで、海の中にいるようだと思い、セバスチャンは知らず知らずのうちに涙を流した。
あぁ、またこの男は一人になるのかと思うと、勝手に泣けてくるのだ。
自分は、ゆらゆらとこの海のような感覚に揺られて、とけて無くなるのをまてばいい。
だけれど、この男は死ぬことができない。この海原にとけて、虚無と孤独を感じなくなるということは、できないモノなのだ。ユーゼフは。
「大丈夫、まだ殺さないよ」
セバスチャンの気持ちを知ってか知らずか、ユーゼフはそう囁いて、あたたかな身体を抱きしめた。
END
あとがき。
海に行った時のイメージで、どれだけのカップリングが書けるか実験中です。
ユーゼフ様は長く生きている分、孤独を怖がっていたりするのか。と、いうイメージ。セバがセバらしくないような気がしないでもない。
2009.7.11かきじゅん