あなたが側にいてくれるなら。
ぴたりと立ち止まると、開けられるとドア。
そこには、ほんの少し苦笑したコンラッドがいて、俺はするりと部屋に入る。
パタンとドアが閉められて、かすかな鍵の閉まる音を聞いて、俺はぱふんとコンラッドに抱きついた。
ぐりぐりと顔をこすりつけると、コンラッドのにおいがして、理由もなく安心する。今日は柔らかくて暖かい、フリース素材のような手触りの寝間着を着ていて、ぐりぐりしていてもかなり気持ちいい。というか最近は、俺がぐりぐりすることを見越してか、コンラッドは寝間着に肌触りの良い素材のものを身につけるようになった。
こんな光景を、村田が見たら笑うか呆れるだろうし、それこそヴォルフが見たら、怒り狂うだろう。ギュンターの場合は…、想像したくもないが血の海だろうなぁ。汁大暴走ってやつだ。
そんなことを考えて、想像して。
やっぱ俺も、この年になってその行動はどうよ。と、思わないわけでもない。
思わないわけでもないが、夜になって。布団に入って揺れるカーテン越しに瞬く星を見ているといてもたってもいられなくなり、コンラッドの部屋の前まで来てしまう。
ひとしきりぐりぐりと、コンラッドに懐いていると、頭上でコンラッドがくすっと笑って、
「どうかした?」
と、聞いてきた。
「何も」
俺は素っ気なく、そう言って。でも、コンラッドにぐりぐりするのは止めないでいた。
「そう」
コンラッドはふんわり笑って、俺の髪にキスを落とした。
それを合図に、コンラッドの大きく節くれ立った手が、俺の髪をなでつけ、あやすように背をなでた。
ゆるゆると撫でられるたび、たまった疲れが溶けて流れていく。
こんがらがった神経の糸がほぐれて、消えていくような感覚。
ものすごく安心できて。
ものすごく心地良い。
「ユーリ」
「…なに」
「たったまま寝ないで。ほら」
そう言って。ふわりと、いとも簡単に俺はコンラッドに抱き上げられる。その瞬間に、コンラッドの髪からシャンプーの香りがして、俺はクスンと鼻をならした。
「なに?」
「うん。コンラッドのシャンプーのにおいだって思って」
「そりゃ、俺ですから」
「そうなんだけどさ。何でかな。無性に安心するんだ」
大切なもののように、丁寧にベッドに寝かされ、毛布を肩までかぶせられた。
「ママタオルってやつですかね?」
「う〜ん。そうかも。あと、ひよこが最初に見たモノを親と思うアレとか」
「インプリンティングですか?」
「そう。それ」
クスクス笑いながら、コンラッドに手を伸ばした。
この時間になると、伸びてきた髭でざらつく顎に触れた。
「あんたは?」
「俺?」
「そう。寝ないの?」
「一緒に寝てほしいの?」
「うん」
間髪入れずに頷くと、コンラッドはちいさく、
「ホント、ママタオルだな」
と、苦笑した。その小さなつぶやきは、俺の耳にも聞こえたけれど、聞かなかったフリ。
ママタオルでも、インプリンティングでも何でもいいよ。
コンラッドが俺のそばにいてくれるなら――。
END
あとがき
ラブラブちょい手前の次男×陛下です。
陛下が恋愛に鈍いのはいいとして、コンラッドもにぶにぶだと、こういう状態が続いたりするんでしょうね〜。
周りはとうにくっついているモノだと思っていたのに、当人たちは「なにそれ?」みたいな感じで(笑)
2011.7.16かきじゅん