雨がやんで、瞬く間に雲が散り散りになっていく。





 太陽が顔を出し、真っ青な空が広がった。




 
雨上がりの空





 「青樺」
 呼ばれて振り返る。
 「李暫嶺、史鋭慶」
 李暫嶺の手には茶器が。史鋭慶の手には茶菓子があって、俺は微笑んだ。
 「何を見ていたのだ?」
 すすっと近づいてきて、李暫嶺は鼻孔をくすぐる香りのいいお茶を茶器に注いだ。
 「空を――」
 そう言って、俺はまた空を見上げた。
 雨上がりの澄んだ空に、ぽっかりと白い雲が流れていった。


――この国は、たくさんの人の血を流した。


――この国の人々は、たくさんの涙を流した。

 
 戦乱でこの国の人々の大切な人たちが死に、或いは別れ、暴力が蔓延った。
 その戦乱には一応の終止符が打たれたものの、まだ火種はそこかしこに燻りつづけている。
 「雨上がりの空が、なぜ澄んでいるのか。解るか?」
 「雨が降った後だから?何故と聞かれても…」
 うまく言葉が見つからず、口篭もる。
 「雨は大気の中の塵芥を核に、水分が集まって地に降り注ぐ。ようするに、空に舞っている塵芥が、水分の重さを利用して、落ちてくるんだ」
 困った顔をしている俺を見かねてか、李暫嶺が説明してくれる。史鋭慶がほんの少し、仏頂面で李暫嶺を睨みつけたが、にらまれている李暫嶺は気にする様子はない。
 「そうなのか。それで澄んだ青になるんだな…」
 「雨が空の汚れを洗い流してしまうからな」
 俺の言葉に、史鋭慶は頷いて。くしゃりと俺の頭をなでた。
 「泣くなとは言わない。泣きたいだけ泣けばいい」
 そう言って、史鋭慶に引き寄せられてはじめて、自分が泣いていることに気がついた。
 兄も死んだ。弟も死んだ。親父も、死んでしまった。母も妹も、義姉になる予定だった人の行方も知れない。
 そして、この戦乱に反乱軍として身を投じた。
 仲間も、たくさん死んだ。敵だったとはいえ、人もたくさん殺し、傷つけた。
 「泣くだけ泣いて。洗い流してしまえばいい。そしたらまた、笑ってくれ」
 史鋭慶がそう囁いてくれて、うれしくてぎゅっと史鋭慶にしがみついた。
 「そうだぞ。青樺がいたから、俺も史鋭慶もここにいる」
 李暫嶺がそう言って、やさしく頭をなでてくれた。
 「…うん」
――ありがとう。
 その言葉は声にはならなかったけど、きっと敏い二人には、ちゃんと伝わっただろう。



 戦乱は、俺たちの勝利した。

 ……しかし今。

 一緒に戦った仲間たちが、よりよい国にしようと一丸となって繰り組んでいる。



 戦乱で、たくさんの人が涙を流した。

 ……けれども。

 その先には、この雨上がりの空のように澄み渡った未来が待っていると、俺は信じている。





 史鋭慶と、李暫嶺と。
 そして一緒に戦った仲間たちがついているから。




END



あとがき。
 何を書きたかったのかよく分からなくなってしまったけれども、こん三人がいればとりあえず私は幸せだよ。
2008.11.17 かきじゅん