クリスマスが終わり、穏やかな日常が戻る。

 着々と新年の準備がすすめられていくその様は、毎年新鮮で…。

 そして僕は、執事を振り返り、仰ぎ見る。



 
シュトーレン  〜最後の一切れ〜



 「まだ残ってたよね?」
 ふいに振り返って仰ぎ見た執事は、ほんの少し眉を上げた。
 「何がですか?」
 「シュトーレン」
 しばらくの沈黙…。
 あ。絶対隠してやがる…。
 「あるんだよね?」
 にっこり笑うと、仕方が無いないという顔をするセバスチャン。
 やっぱ隠してたんだ。
 「……で?」
 ほんのちょびっと、動いた表情。
 「食べたいんだけど」
 できるだけ、かわいらしくおねだりする。
 「仕事が終わったら、食べさせて差し上げます」
 「やだ。食べてからしかしない」
 「旦那様」
 「食べたい」
 にべもなく仕事をしろというセバスチャンに、強硬に言う。
 「……」
 「……」
 しばらくの間。
 セバスチャンが溜息をついて、ちいさくつぶやく。
 「毎年毎年…」
 よっしゃ!勝った!!と、内心ガッツポーズ。
 セバスチャンはクリスマス後まで一個だけ、シュトーレンを取っておく習慣がある。で、毎年毎年ひとりでこっそり食べている(のを僕は知ってる)。
 熟成されたシュトーレンは、クリスマスより風味が濃くおいしいのだ。
 何を思って食べるのか、大切そうにシュトーレンを食べるセバスチャンを見るのが好きだ。
 その表情は、クリスマス後のシュトーレンでしかみられないという、なかなかやっかいなもので…。
 「だっておいしいんだもん」
 言い募ると、セバスチャンはあきらめた表情で僕を抱え上げた。
 「茶葉はウエッジウッドのスペシャルブレンドでおねがい」
 「畏まりました」
 「セバスチャンも一緒に食べよう」
 「…」

 廊下をセバスチャンに抱えられながら、僕はひと時の幸せを満喫する。
 今年も後わずか。
 今年のシュトーレンも後わずか…。
 来年も、こうやってなんだかんだと過ごせたらいいと思う。
 「セバスチャン、ラムも持ってきてよ」
 「お酒を飲んだら仕事にならないからダメです」
 「え〜」
 セバスチャンや、この屋敷のみんなと――。


 END

  


クリスマス&末年始連続企画・セバスチャン編第4段!
今回はデーデマンです。

なんか、仕事が忙しくって、なかなか更新できなくて申し訳ない…。
正月は出勤なんですよ。

一応、セバスチャン編は終了です。
ありがとうございました。
2007.1.3かきじゅん