甘く漂う、ラムの香り。

 香ばしい、バターの香り。

 焼きあがるシュトーレンの香り。


 ああ。
 もう、そんな季節だったのかと、外を見れば、ちらりちらりと舞う雪が見えた。



 
シュトーレン  〜懐かしい味〜



 「来る…」
 突如としてBはそう呟いて、デイビットにタックルをかけ…もとい、抱きつきにいった。デイビットも手馴れたもので、おぶひもでBを固定し、サクサクと仕込み作業をしていく。
 「やぁ、セバスチャン」
 「そろそろいらっしゃる頃だと思っていましたよ、ユーゼフ様」
 そう言って、セバスチャンはティーカップをテーブルにおき、新たに茶器を用意しはじめた。
 「すまないね、毎年」
 ニコニコとユーゼフが話を切り出すと、セバスチャンはにべもなく、  
 「そう思っていらっしゃるなら、お店でご購入されてはどうですか?」
と、切り替えした。
 優雅にお茶を入れ、ユーゼフにそっと差し出した。
 ユーゼフはそれを受け取り、一口すすった。
 「そうはいうけどね…。君のが一番、懐かしい味がするんだよ」
 やけにしんみりと呟いたユーゼフに、セバスチャンは一瞬作業の手を止めた。しかし、それは一瞬のことで、
 「お褒めに預かり、光栄ですね」
と、言い、焼きたてのシュトーレンを切り出した。
 「まだ味はなじんでいませんが…」
 「ありがとう」
 ユーゼフはまだほのかに温かいシュトーレンを口に運んだ。

 記憶どおりの懐かしい味。

 これを作ってくれたのは、誰だっただろうか…。

 それは遠い遠い昔の、過去の話。

 「包んでおきますから、帰りにお持ちください」
 手際よくシュトーレンにラム酒をかけながら、セバスチャンが言った。
 その声に、ふと我に返る。
 「すまないね」
 そう言って、ユーゼフは苦笑した。

 毎年、セバスチャンのシュトーレンを貰いに来る。
 最初は、デーデマン家からのおすそ分けだったような気がする。
 なんだかんだと入りびたり、なんだかんだと貰いに行くようになり、セバスチャンもなんのかんの言いつつ用意してくれている。
 ずっしりフルーツが入って、しっとりと焼きあがったシュトーレンの最後の一口を口に入れた。
 「やっぱり、懐かしいな…」
 ユーゼフはそう小さく呟いて、それからかすかに微笑んだ。


 END

  


クリスマス&末年始連続企画・セバスチャン編第3段!
今回はユーゼフさんです。

2006.12.23
 かきじゅん