白い粉砂糖に包まれたシュトーレン。
元々は、ザクセン州の州都ドレスデン市でクリスマス時期に焼かれる郷土菓子だというのは、この屋敷に来てから、雑学として知ったこと。
小さい頃はクリスマス時期になれば、パン屋さんで焼かれたものを買って来ていた。
おつかいは、毎年、俺の仕事だった。
シュトーレン 〜昔と今〜
「B、そろそろやるか」
朝のコーヒータイムにセバスチャンはカレンダーを見ていた。
「もう、そんな季節なんですね…」
俺もカレンダーを見て、頷く。
一年が経つのはつくづく早いと思う瞬間だ。
「今日?明日?」
セバスチャンはコーヒーを片手に新聞を読破していってた。いつみてもすごい早さだ…。
「お前の時間が空いていれば今日だな…」
視線は新聞からあげないまま、セバスチャンは答えた。
一瞬、今日の予定を考えて、とくに大きなことは何もなかったな…。と考える。
「……はい。では、今日で」
そう答えるや否や、セバスチャンはコーヒーを飲み干して立ち上がった。時間キッチリである。おそらく旦那様を起こしに行くのだろう。
スタスタと歩いて、ドアの前でぴたりと止まった。
「デイビット」
「なんだ?」
「今日一日、オーブンと調理場のスペースを少し借りるが、不都合はないか?」
くるりと振り返って、セバスチャンは尋ねた。
「今日はオーブン、使わないから大丈夫だ」
「わかった。じゃあ、B。手が空き次第厨房へ」
「わかりました」
「デイビット、今日一日、オーブンと調理場のスペースを少し借りる」
「OK!」
矢継ぎ早にセバスチャンは指示を飛ばし、旦那様を起こしに行く。
パタンとドアが閉まって、靴音が遠ざかる。
小さい頃は、パン屋に買いに行っていたシュトーレン。
今は、毎年、セバスチャンと一緒に作る。
「B君、ちなみに何を作るんだ?」
デイビットさんに聞かれて、俺は、
「シュトーレンですよ」
と、答えた。
「シュトーレン?あぁ、たしか、クリスマスまでに一切れづつ食べる習慣の…」
デイビットさんはそんな季節か…。と、カレンダーを見た。
「ドイツではクリスマスの4週間前から、薄く切って食べつつクリスマスを待つのが一般的ですね」
「フラン○フルトは違うのか?」
耳聡いというか、なんというか。
俺は、少し笑って。
「この辺りでは、クリスマスまでお茶菓子代わりにどんどん切って、何本も食べるんですよ。だから、大量に作るんです」
と、言った。
ゴンゴンゴンッ!
ベキッ!!
「おぉ、やってるな。ハニー」
「聞きなれると、なんとも思いませんね…」
セバスチャンが旦那様をしばきあげる…もとい、起こす音を聞きながら、俺は残りのコーヒーを飲み干した。
昔、パン屋で買って、大事に大事に持って帰ったシュトーレンもおいしかったけど、セバスチャンと作るシュトーレンは、焼き立てでも少し置いてからでもおいしい。
「今年も楽しみだな…」
そう、俺は呟いた。
END
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クリスマス&末年始連続企画!
スレイヤーズ編に続き、セバスチャン編も発動です。
ドイツの伝統菓子、シュトーレンを中心に話を進めていきますので、どうぞお楽しみに!!
2006.12.15かきじゅん