ココロは警報を鳴らし続ける      



 ぐ〜。
 元気がいいお腹の音が響く。
 「ボク、お腹減っちゃった・・・」
 シャオルーンの上に乗って空の旅をしている最中に、マオが言う。お腹をおさえ、空いてます。と意思表示する。
 「といってもさっき食材を全て使ってしまったわ・・・このバカが・・・」
 占いの最中か、タロットカードから目を離さずヒルダが言う。
 「バカ言うな!!」
 食材を全て使った張本人、ティトレイが理不尽だと言わんばかりで起こる。
 「使ってしまったものは仕方ない。シャオルーン、ここから一番近い町におろしてくれ」
 ユージーンが二人を制して言う。
 アガーテの姿をしたクレアが、そんな光景を微笑ましそうに見る。
 「あー、クレアさんに笑われてるー」
 マオがクレアを指を指して言う。
 「だって、おもしろいんですもの」
 クレアは負けずと言う。
 「はいはーい。降りるよー」
 シャオルーンはそう言うと同時に下降した。


  「へぇ〜、サニイタウンか。久しぶりだな」
 ティトレイが言う。
 サニイタウン。
 トヨホウス河の河口に建つ、ウエスタリア大陸一の大都市だ。四方を河と海に囲まれている。別名芸術の都とも言われるこの大都市は、建築物は色彩豊かで、芸術家が多く住んでいる。何より、歩いているだけで楽しい町である。
 サニイタウンは西大陸最大の玄関港で、昼夜問わず多くの蒸気船が出入りしている。旅人や観光客、芸術家が訪れる。実際に町はずれで猫好きではあったが、画家の老人にあったことがある。グレープグミを考えた人も住んでいるらしく、グミ愛好家もよく訪れると以前聞いたことがある。
 サニイタウンを空から見ると、まるで水上に浮かんでいるように見える。
 「不思議ですね。前にきてからそんなにたってないはずなのに、すごく懐かしいです」
 「そうだな」
 「どうでもいいけど、さっさと買い物しましょう」
 ヒルダが切り出す。誰かが言わないと、前きたときの話にまでさかのぼりそうだったからだ。
 ユージーンが頷く。
 「では、こうしよう。まずティトレイとマオが食材を買いに行く。俺とアニーが道具を見に行こう。ヴェイグとヒルダは・・・」
 「私はパスよ。気晴らしにお酒でも飲みに行くわ」
 そう言うとヒルダは仲間に背を向けて歩き出す。
 「俺は宿をとってくる」
 ヴェイグが短く言う。
 「わかった。では宿で落ち合おう」
 そう言うと各々目的地に向かって歩き出す。
 「クレアはどうする?」
 ヴェイグがクレアに聞く。
 クレアは少し悩んだ後、
 「少し町を歩いてみるわ」
 と言った。
 「わかった」
 ヴェイグは頷く。
 少し、気まずかった。


  ヴェイグはクレアと別れた後、まっすぐ宿屋に向かい、ベットに腰を下ろす。そして剣を取り出し、軽く調子を見る。
 問題はない。
 剣をしまい、一息つく。
 みんなが帰ってくるまで、まだ時間がある。
 一眠りでもするか・・・。
 そんなことを考えてる矢先に、突然すごい風が宿にの窓をこじ開ける。
 咄嗟に腕でガードし、窓を見る。
 そこには見慣れた人物が、座っている。
 「やぁ、ヴェイグ」
 そして何事もなかったかのように、笑いかけてくる。
 「サレっ!」
 思わず叫ぶが、サレは不敵に笑うだけである。
 サレは窓から腰を上げ、窓を閉める。そして何気ない顔で、ヴェイグの隣に腰を下ろす。
 「最近あえなくて、寂しかっただろう」
 くだらないことを言う。
 「なんのようだ?」
 とりあえず用件は聞く。
 「冷たいなー」
 軽口をたたくサレに眉を寄せる。
 「折角あえたしね。一緒にお茶でもどうかな?」
 ヴェイグの長い三つ編みで遊びながら、サレは言う。
 そして返事をする前に、三つ編みから手を離し、準備を始める。
 「何故、俺たちがここにいるの知っている?」
 準備をしているサレに問う。多分聞いても無駄なことぐらいはわかっているが、こうも毎回毎回一人になった瞬間を狙って現れるサレに不信感を隠せない。
 「ヴェイグが呼んだから」
 誰も呼んではいない。
 そうしている間にも準備ができ、紅茶をカップに注ぐ。
 「はい、ヴェイグの」
 サレは注いだばかりの熱い紅茶をヴェイグに差し出す。ヴェイグも受け取るが、まだ口を付けない。
 「何も入ってないよ」
 いちお、いっておく。
 「熱くて飲めない」
 「そういえば前もそんなことをいってたね」
 軽いのりで言う。
 サレはカップをテーブルの上に置き、お菓子を持ってくる。ヴェイグはお菓子を受け取り、紅茶が冷めるまでの間、食べる。
 すでに何回かやっていることで、最近では抵抗するきもない。
 最初は警戒したものだが、サレはただ紅茶を飲んで、お菓子をつまんで、飲み終わったぐらいに帰って行く。
 何をやってるんだ。
 と最初は怒鳴ったものだが、最近はむしろサレといると落ち着く自分がいる。
 そうしている間に紅茶は冷め、ヴェイグは口を付ける。
 飲んだことのない味である。
 「どう?この間手に入れたものなんだけど」
 サレが興味津々で聞いてくる。
 「おいしい」
 そう言うとサレは「それはよかった」と言う。
 そして顔を近づけてくる。
 唇と唇が重なり合う。
 まるでぬくもりを求める子供のように、唇を重ねる。
 唇が離れると、サレの帰る合図である。
 「ヴェイグはキスいやがらないんだね」
 「・・・」
 ヴェイグはただ沈黙する。
 何故だろう。
 最初はすごく嫌だったはずなのに、今ではするのが当たり前になっている。
 「好きだよ、ヴェイグ」
 そう言うと、サレは立ち去る。
 その気持ちに堪えてはいけないと、頭の中で警報が鳴っている。
 鳴り続けている。

 夕方に近づくと、仲間達が次々に帰ってくる。
 そしてベットに潜り、一息つく。
 
 警報は今もなっている。

 次にあったとき、俺はサレになんて言おうか・・・


 END

 


久しぶりのTORです。
何故かサレとヴェイグをほのぼのにしたいと思うと、紅茶を飲ましたり、餌付けしてたりするのは何故でしょう?いやホントに何故ですか。
謎なんです。謎ですから。
2007.6.10 天神あきな