クレアを助けたくて頑張った。
 だがそれはクレアではなくアガーテで。
 俺は何がしたいんだ?
 その答えはいつまでたっても現れない。


  --偽り--  


 バビログラードに向かう途中、一行は野営を行っていた。
 今の見張りはヴェイグである。
 ヴェイグのすぐ近くで、アガーテの姿をしたクレアが小さな寝息を立てている。
 ヴェイグは複雑そうにクレアの寝顔を見た。そして自分の手を見た。
 凍りかけている手。
 それはフォルスの暴走を意味している。
 分かっていても、止められない。
 クレアはクレアだと思っているのに、頭では理解しているのにっ!
 そんな自分に苛立ちを感じずにはいられず、腸が煮えくりかえっていた。
 そんなヴェイグを見ているのが楽しくって仕方ない人物がいる。
 「もしかしてまだクレアクレアって言うじゃないだろうね、ヴェイグ」
 サレである。
 「何のようだ・・・」
 サレの行動になれてるのか、特に振り向きもせずに答えた。
 「相変わらず冷たいなぁ〜、ヴェイグちゃんは・・・」
 そう言うと楽しそうにヴェイグの手を見た。
 すでに手袋を装備してあったが、その程度でだませるほど、サレは甘くない。
 「何だ」
 サレの目線に気づき、睨む。
 「その手・・・、いいね〜」
 そう言うとサレはヴェイグの腕を掴んだ。ヴェイグもすかさず動くが、サレはヴェイグの動きを封じようと身を乗り出す。
 「調子にっ・・・のるなっ!!」
 ヴェイグがサレの腹に蹴りを入れる。サレは眉を軽く動かしたが、その程度の攻撃でしかなかったらしく、サレに押し倒されるという形となってしまった。
 「そうゆう風に抵抗されると、さらに楽しいんだよね〜、それにこの手、ここまで凍ってたとはねぇ〜」
 サレは子どもみたいな笑みを浮かべ、凍ったヴェイグの手に口づけをした。
 ヴェイグは不愉快そうに眉間に眉を寄せた。
 「そう、そんなにこの手見られたくないんだ・・・」
 声を出さないようにしているヴェイグを見て、せせら笑いをする。
 ヴェイグは唇を噛んだ。
 (クレアだけには・・・)
 クレアだけには見せるわけにはいかない。
 クレアの悲しそうな顔を見たくなかった。
 「よっぽど大切なんだねー、クレアちゃんが・・・」
 サレが皮肉たっぷりに言ってきた。
 ヴェイグはただ顔を歪める。
 「でもさ、隠し事して、そこまでして本当に大事なのかな?」
 「・・・っ!?」
 「僕は凍りかけた君も好きだよ、ヴェイグ」
 サレはヴェイグの凍った手と、自分の手を合わせてみた。
 「そして今の君の表情・・・、ゾクゾクするよっ!」
 サレは実に嬉しそうだった。
 ヴェイグは殴ろうと思い、片方の手を動かしたが、あっさりと受け止められてしまった。
 「君は感情的だね」
 「黙れっ!」
 ヴェイグの怒鳴り声に、寝ていた仲間達が軽く動いた。
 これ以上騒ぐと起きてしまうだろう。
 半分、目が覚めてしまった人もいるかもしれない。
 「王の盾に来ないか?」
 「何を・・・」
 そんなことはお構いなしで、サレが唐突に言う。ヴェイグはあまりにも妙なことを言うので、反論の言葉が見つからなかった。
 「そうしたらクレアちゃんのことも、凍った手も、フォルスのことも解決できるよ」
 耳元に近づき、
 「育ててくれた養父、養母も気が楽になるというものだ・・・」
と囁いてきた。
 「お前には関係ないだろうっ!!」
 サレから目を離していった。そんな自分を軽蔑した。
 「関係ないね。でも僕にも一つ利点がある」
 サレはヴェイグの上から退いて、乱れた前髪を持ち上げた。
 「君のその顔が、僕のモノになるっていういいコトが・・・」
 そう言うとサレは笑った。
 ヴェイグはサレを見上げた。
 その顔は、青白い。
 「答えはいつでもいいよ」
といってサレは夜の闇に消えていった。
 「ヴェイグ」
 気がつくとティトレイが起きあがっていた。
 「ティトレイ・・・」
 ティトレイが辺りを見回し、
 「さっきここに誰かいなかったか?」
と聞いてきた。
 「いや・・・」
 これが精一杯の返答だった。


 そのまま顔色が悪いとティトレイに怒られ、見張りを交代させられた。
 「俺はこんなに震えていたのか・・・」
 それに本当に身体が冷たくなってきた。
 自分の無力さも感じさせられた。
 (疲れてるんだ・・・)
 そう思い、目を閉じる。
 目を閉じて眠ろうとしても、サレの言葉が頭から離れなかった。
 『大事なの?』
 大事なんだ。
 『隠し事して?』
 それでもっ・・・!
 『王の盾の来ないか?』
 自分の心も、クレアも、サレも分からない。
 分かっていることは、次に凍るのは自分自身だ。  



 END

  
 


初、小説部屋にじゅん以外の小説upです!
コレ書くのに偉く時間がかかった・・・。
妙に暗くてスイマセン・・・。
サレヴェイ大好きなんです。にしてもヴェイグしゃべってねぇ。
でもいいね、主人公凍るって。いや、ゲームでは凍ってくれなかったけどさ。
でもちょっぴり思ってみたり。隠し事までして、大事って何なんだろう?って。
人それぞれって言ってしまえばお仕舞いですが・・・

06.7.3天神あきな