「バレンタイン?」
 「そう、バレンタイン。好きな人にチョコレートともに思いを伝える日なのよ」
 「へぇ〜。そんな日があるんだ」
 暖かい日がさすテラスで、ウイッチとアルルはおやつのクッキーをつまみながら、他愛もないおしゃべりに興じていた。
 「でも、どうせならボクはもらいたいなぁ…チョコ」
 「そりゃぁ、誰だってそうよ」
 クスクスとひとしきり笑って、お茶を飲む。
 好きな人かぁ…。
 アルルはお茶を飲みながら、大好きな人を思い出していた。



 とっても大好きな人だから。



 「カレーなら作れるのにな…」
 グチャグチャになった台所を見て、アルルは溜息をついた。
 「ぐー」
 カーくんは何も気にせず、テーブルの上で踊っていた。
 「どうしてこうなるんだろう…。溶かして固めるだけって聞いたのに…」
 お鍋の中には、黒い物体と油に分離したチョコレート。カー君はひょいと鍋に近づき、真剣な?顔でアルルに言った。
 「ぐぐっぐー」
 「え?火にかけちゃダメなの?」
 「ぐー」
 「え〜。じゃあ、どうやって作るんだろう…」
 わかんない…とアルルはテーブルに突っ伏した。
 シェゾにあげたかったのに。と、小さく呟いた。ぶっきらぼうで変態だけど、やさしい人……。
と、その時、コンコンとノックの音。
 「誰だろ…?はぁい」
 パタパタと走っていって、戸を開けた。
 「シェゾ!?」
 「おう」
 ほんの少し、照れた様子のシェゾがぶっきらぼうに手を上げた。
 そして……。
 「やるよ」
 アルルの手に落とされたのは、少し形のいびつなチョコチップクッキー。
 驚いて見上げると、ますます照れた様子でシェゾはそっぽを向いた。
 「……バレンタインには、男からプレゼントするのが習慣だからな」
 「えぇ!!ボクは女の子から、チョコを上げるって聞いたよ?」
 とても大切そうにクッキーを持ったアルルは、それでもシェゾに掴みかかりかねない勢いで聞いた。
 「それは、極東のチョコレート会社の陰謀だ…」
 「そうなんだ〜。でも、うれしい」
 ものすごく幸せそうに微笑むアルルを見て、シェゾもふんわりと笑った。
 「だってね。ボク、シェゾにチョコ上げようと思って頑張ったんだけど、全然でさ」
 「うん」
 「でも、シェゾが作ってくれたからいいよね」
 何かが違う…。
 そう、シェゾは思ったが、アルルの無敵の笑顔を向けられて、まぁいいか。と思った。



 とっても大好きな人だから、何かをしてあげたい。

 とっても大好きな人だから、よろこんでほしい。

 その気持ちだけでも、あたたかくなれるよね。

 そんなステキな日――。



 はっぴぃ・ばれんたいん。

 END

 


あきなからのリクで、シェゾ×アルルでした。
2007.2.14かきじゅん

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