平和への誓い
「バン…」
トーマは、同じGFのメンバーであるバンを振り返った。
「ああ」
二人は言葉少なに、テロリストたちが占拠・立てこもり、無残な姿となった海の家を見た。
残暑の厳しい季節である。
まだ、海で遊んでいた人も多かっただろう。
青い海と白い砂浜に涼を求めて、やってきた人々も多くいたことだろう。
まさか、そこが悲劇の場所になるとは思わずに…。
「…ひどいものだな」
トーマは呟いて、再び機材を抱え直した。バンも続いて歩き出した。
半壊となった建物。ひきちぎられて、無残なパラソル。
自分たちが応援要請を受けて、この白い砂浜に来たときにはテロリストたちのゾイドが闊歩していた。
つい、昨日のことだ。
昨日、ここで戦いがあった。
遊びにきていた人々の前に、突如として現れたテロリストたちのゾイド。
奇跡的に死者は出なかったが、人質となった少女が重体。
彼女は今、死線をさまよっている。
バンは昨日の戦闘で壊れたドアを、注意深くあけた。
トーマは機材の準備をした。爆発物がないか、再度確認をするためだ。
「コレ…」
バンはそろそろと中に入っていったが、ふいに足を止め、しゃがみこんだ。
「どうかしたのか?」
バンは汚れた人形を、トーマに見せた。幼い子どもが持っていそうな、かわいらしい人形。昨日、テロリストが立てこもった際に人質とし、今もなお、死線をさまよっている少女は、5歳になったばかりだったという。
「昨日の、女の子のものだろうか…」
汚れを払いながら、バンは立ち上がった。
「そうかもな…」
「早く、争いのない世界にしたいな」
トーマは、機材のスイッチを入れた。
「ああ」
バンは力強く頷いた。
それは、強い、平和への誓い。
いつでも、戦いのあったあとに強く強く決意すること。
人々がいつでも笑顔で暮らしていけるようにと。そして、ゾイドが破壊や殺戮の道具にならないようにと、願い、そんな世界に必ずすると誓う。
ふとその時、遠くから声がして、バンとトーマは動きを止めた。
「バン!」
息を切らせて、フィーネが走ってきた。
「フィーネ。なにかあったのか?」
「フィーネさん」
フィーネは大きく深呼吸してから、にっこり笑った。
「昨日の女の子、目を覚ましたそうよ」
「よかった!」
バンとトーマは同時に歓声を上げた。
3ヵ月後、再びその土地を訪れたバンとトーマは、英雄として担ぎ上げられ、苦笑いをしていた。
あの時、バンが拾った人形は、ムンベイの手によってキレイにされ、少女に返された。
3ヶ月の間に少女はすっかり回復し、笑顔も取り戻していた。
「私、お兄ちゃんと結婚する」
と、トーマの後を追っかけまわす姿に、周囲は和んだ。
「トーマ、よかったな」
「おめでとう、トーマ」
「バン…。フィーネさんまで…」
爆笑しているムンベイと、笑顔で手を振っているバンとフィーネ。トーマは小さなお嫁さん候補に、ほとほと弱っていた。
周囲から、ドッと笑い声が起こった。
バンは、ふと空を見上げた。
あたたかな人々の笑顔を喜ぶかのように、突き抜けるように青い空が広がっていた。
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今回あみだで小説の傾向を決めたのが、そもそも誤った考えだったかもしれない。
なんて思わせるほど、引いた内容は大変だった。
海の家/シリアス
海の家だけならまだ何とか。それでシリアスって、結構悩まれましたよ。
この小説は3000ヒット記念でした。
配布期間は終了しました。ありがとうございました。
2006.11.14 かきじゅん