昔はあんまり感じなかった。
 こうして旅をしていて、感じ始めた。
 力の差。
 男と女というのも、あるかもしれない。
 守って貰うだけじゃ駄目だ。
 私は強い。
 もっと強くなる。



お互いのポジション



 静かで邪気が満ちている森。
 レニス達は早足で目的地に向かっていた。
 ナパイアスの話だと、近くに飛竜の大群がいるらしく、怪我人も多い中戦うのは危険とリカルドが言ったからだ。
 その意見には賛成だった。 
 実際、長い旅に不安の声も多く、妖魔に勝てるのかという声も聞こえてきている。
 精神的疲労も大きい。
 士気が下がる一方にあるこの状況では、今は少しでも体を休ませたい。
 「どこか野営できるところを探そう。怪我人の治療もしなければならない」
 リカルドが言う。後ろにいたキャムウェイも頷く。
 「どこか良い場所はないかな?」
 キャムウェイの言葉に反応して、ナパイアスが羽を広げ上昇した。
 「いいな〜、空が飛べて・・・」
 飛翔したナパイヤスを見て、キャムウェイが呟く。
 「お前には無理だがな」
 リカルドが横から皮肉を言う。
 「リカルド」
 頬をふくらませて怒るキャムウェイにお手上げと言わんばかりに、キャムウェイから目を逸らす。
 「逸らすなっ」
 怒り出そうと口を開こうとしたが、ナパイヤスのイオが空から下降してきた。
 「どうだった?」
 「もう少し行ったところに泉があったわ。そこなら休めると思うわ」
 少し悩んだ後、方角、距離の目安を確認する。
 「泉の水は清浄よ。飲めるわ」
 後から下降してきたナパイヤスのパンが言う。
 「ありがとう。キャムウェイ、行くぞ」
 そう言い終わる前にリカルドは歩き出す。
 「えっ、ちょっと待ってよ。」
 早足に行くリカルドに、キャムウェイは怒るタイミングを失い、慌ててついて行った。
 
 
 泉に着くと、体が動かせる人から野営の準備にかかり始めた。
 火を付けるための薪を集める者、森に詳しい者と食べれそうな食材を探す者、泉の水を酌んで治療の準備にかかる者と様々に分かれる。
 「レニスは大丈夫かい?」
 オネストがずっと先頭を歩いていたレニスに問いかけた。
 「大丈夫」
 レニスはオネストに微笑みかける。
 「そうか、無理はしないでくれよ」
 そう一言言うと、オネストは治療に戻った。長旅でみんな疲れている。オネストの仕事は重要でその量は減らない。
 「オネストこそ・・・無理はしないでくれ」
 レニスは後ろから静かに言った。
 オネストの邪魔になってはならないとその場を去り、自分も何かしようと辺りを見回す。
 ざわざわ。
 目に止まったのは、人溜まりになっている所だった。
 (何があったんだろう?)
 恐る恐る近づくと、見慣れた二人が激しい口論をしていた。
 「ハムっ!!アーネスっ!!」
 急いで二人に間に割ってはいる。
 「レニスは黙っててっ!これは私とハムの問題なんだから!!」
 対するハムも、
 「レニスは黙ってろっ!これは俺とアーネスの問題だ!!」
 と言って聞かない。
 この二人はよく衝突していたが、最近多くなっていて、味方の士気に関わるとリカルドが指摘していた。
 原因がなんであれ、二人の間に止めに入る。
 「二人とも、落ち着いて・・・」
 しかし二人は、レニスの言葉に耳を貸さない。それどころか、次第に悪くなっていく。
 「あんたみたいな体力バカには、わからないわっ!!」
 「好き放題いいやがってっ!!」
 「なによ。やるなら相手になるわよ!!」
 そこまでいったら、やばい。
 レニスは咄嗟にハムを押さえる。
 「レニス!!邪魔すんな」
 ハムが怒鳴る。
 しかし、ここで離すわけにはいかない。
 アーネスのほうはキャムウェイやアーチャーのエリザベスが止めに入ってくれてようだ。
 そのまま二人を力業で、引き離しに入る。
 レニスの方にも何人かの助っ人が入り、なんとかハムを別の場所に移動させる。
 しかし双方からの罵声は止むことなく、ぶつかり合っていた。


 「それでもなく怪我人が多いんだ。これ以上増やさないでくれ」
 オネストの所に強制的に連れてこられたハムに、ため息混じりにオネストが言う。
 「俺だって好きでやってる訳じゃない!!アーネスが・・・」
 そう言うと、つらそうに目を落とす。
 「で、なにがあったんだ」
 リカルドが言う。
 「何って・・・」
 ハムが返答に困り、口を濁す。
 「毎度毎度、バカみたいに痴話喧嘩をされていてはかなわん」
 「痴話喧嘩って・・・」
 オネストが呟くと、ハムは軽く睨む。
 オネストは苦笑してこまかす。
 「そう見えるだろう」
 リカルドが不敵に笑う。
 オネストは頷くが、同時に「あなたに言われても」と思ったが心の内にとどめる。
 「俺とアーネスはそんなんじゃねぇよ・・・」
 疲れたように言う。
 「味方の士気に関わる。極力控えたほうがいい」
 そう言うとリカルドは、用事があると立ち去っていった。 
 見送った後静かに、
 「分かってるさ・・・」
と呟き項垂れた。
 

 「アーネスちゃん、私が言うのもなんだけど、毎度毎度はよくないと思うの」
 とりあえずハムに強制退場して貰い、キャムウェイがアーネスに言う。
 「それは、分かってる」
 アーネスが目を逸らして言う。
 「リカルドが言ってたけど、あまりに多いと味方の士気にも関わるの。あなたとハムはよく前線出でるし、戦ってる時のあなた達は互いの行動をよく把握していて私自身安心できるの。」
 「そうかな・・・」
 「・・・え?」
 アーネスの意外な返事にキャムウェイは不思議そうな顔をする。
 「だって前線出でるにしても、私はハムやゼクス、レニスやキャムウェイ達を盾にしてるんだよ。時にはオネストだって・・・。私は守られていないと満足に戦えないって思い始めてきて・・・。昔はそんなこと、感じなかったから」
 アーネスの素直な気持ちに、キャムウェイは返答に困った。
 キャムウェイは少し考えて、
 「それでいいんじゃないかな?」
と言った。
 「私はよくないの」
 アーネスは反射的に返す。
 「私はアーネスちゃんの盾になってるとは思ってないから」
 「・・・え?」
 意外なキャムウェイの返答に、今度はアーネスが呆気を取られる。
 「私には私にしかできない仕事があって、アーネスちゃんには私たちの後ろでしかできない仕事があるでしょう」
 「でも・・・」
 尚も悩むアーネスに、キャムウェイは元気よくアーネスに笑いかける。
 「私だって、みんなに守られてるよ。独りで戦ってるわけじゃないから・・・、元気出して」
 言い終わるとキャムウェイはアーネスの乱れた髪を整える。
 (そうだったらいいな)
 アーネスは今の気持ちを隠すように、帽子を握りしめた。
 

 「だいたいの喧嘩の理由は分かったか?」
 食事時にリカルドがキャムウェイとオネストとレニスに聞く。
 「ハムの方は特に言ってなかったな」
 オネストが言った後、苦笑しながら「ぶつぶつ文句は言ってたけどね」と付け足した。
 「アーネスちゃんはちょっと難しいわね〜」
 キャムウェイが食べる手を止めて言う。
 「アーネスが・・・?」
 口の中のものを飲み込んで、キャムウェイは頷く。
 「アーネスちゃんはアーチャーでしょう。それで私たちの後ろに隠れて戦ってる自分が嫌みたい」
 リカルドは眉をしかめ、「何を今更」と言わんばかりの顔をする。
 「アーネスはずっと自分で生計立ててきてたから、守って貰うことに戸惑いの覚えたのかもじれない」
 ため息をつき、
 「確かに難しい」
と言った。
 

 邪気に満ちた森だけあって、夜も静かで動物の気配がしない。
 アーネスは独り野営地から離れ空を見上げた。
 『私たちは盾だと思ったことはないもの』
 先程キャムウェイに言われた言葉が耳をこだまする。
 「・・・すっきりしない」
 アーネスは自分の頭を掻きむしった。
 「らしくないな、私」
 気がついた時には目から涙が零れてきた。
 「うぅ・・・」
 アーネスは顔を隠しながらその場で座り込んだ。
 ただアーネスの嗚咽が響いた。

 ***

 食事が終われば、片づけもある。
 ハムは片づけを手伝いながら、今日のアーネスとの喧嘩を思い出した。
 (心配してやっただけなのによ・・・)
 森を歩いているときに、アーネスが木の枝に当たったと聞いたので、心配して声をかけたのだ。聞いた話だと前を歩いてた人の鎧に木が引っかかっていたらしく、後ろにいたアーネスは振り子運動で帰ってきた木の枝に激しく当たったらしい。
 心配して声をかけたら、あの騒ぎである。
 (なんなんだよ)
 しかし、あそこまでムキになったアーネスを見るのは久しぶりだった。本当に何があったんだろうか。
 そういえば何か口走っていた。
 『あんたは前にいて、私は後ろにいただけ』
 確かにそう言っていた。
 それの何がいけない。
 わからなくなり、苦悶する。
 「ハム、手が止まっている」
 「あっ」
 後ろを振り向くと、ルソーがいた。その手には大量の洗濯物がある。
 「ルソーか・・・。洗濯当番か、大変だな」
 「毎日すれば飽きるが、たまには構わないさ」
 そう言うと、ルソーは大量の洗濯物を置き、タライの中に水を入れる。
 「俺はたまにでもごめんだな」
 大量の洗濯物を見て言う。
 「大半の者がそう言うな。それにしても、今日も派手に喧嘩したようだな」
 「うっ・・・」
 今一番出されたくない話題だったので、おもわず口から出てしまった。
 「喧嘩するほど仲が良い。だが多すぎるのも問題だ」
 「仲良くない」
 子どもみたいな事を言うハムに苦笑し、大量の洗濯物を見る。
 「彼女なりに思うところがあるのだろう」
 そう言うとルソーは作業を開始する。
 ルソーを横目で見ながら、もう一度考えてみる。
 (『あんたは前にいて、私は後ろにいただけ』ってなんであいつあんなこと言ったんだ?)
 もう一度横にいるルソーを見た。
 手慣れた作業姿が目に映る。
 「なぁ、ルソー」
 「なんだ」
 ルソーはハムの方を見ずに言う。
 「後ろと前ってなんだ?」
 「・・・」
 手を止めて、ハムの方を見る。
 「アーネスが後ろで弓矢で戦うだろ。俺が前で、アーネスが戦いやすいように俺が切り込む。これって普通だよな?」
 ルソーは作業をしてた手を拭き、言った。
 「見方が色々あるが、恐らく自分だけ守られているって思ってしまったんだろう」
 「・・・?」
 ハムは首をかしげる。まだ納得がいかないらしい。
 「後はアーネス次第ということだ。心配なら行ってやれ」
 ルソーはそう言うとまた作業に戻る。
 (・・・)
 ハムはまた皿持ったまま考え込む。
 「片づけは俺が適当に誰かに頼んでおく。聞きたいことがあるなら、早めに聞いてこい」
 ハムは少し悩んだ後、「ごめん」と一言残し走って行った。
 ルソーはその背中を見送った。
 ルソーはハムの姿が見えなくなると、作業に戻ろうと大量の洗濯物に目を向ける。
 「すいません。これもいいですか?」
 洗濯物を抱えたエリザベスが後ろからルソーに声をかけた。
 「あぁ、構わない」
 エリザベスは洗濯物を置き、近くにある食器類に目がいく。
 「ルソーさんはこれもお一人でやるつもりなんですか?」
 「あぁ」
 ルソーは短く頷く。
 エリザベスは大量の洗濯物と食器類を見る。
 ルソーは特に気にせず、作業を進める。
 「て、手伝いましょうか?」
 恐る恐るエリザベス言う。
 「助かる」
 「いえ・・・」
 そう言うとエリザベスは服の袖をめくった。

 
 アーネスを探しに行ったのはいいが、なかなか見つからない。取りあえず手当たり次第に声をかけてアーネスの所在を聞く。
 「テレンス、アーネス知らないか?」
 「喧嘩してたんじゃないのか?」
 それを言われるとつらいが、気を取り直し聞く。
 「聞きたいことがあるんだよ。それより見なかったか?見あたらないんだ」
 テレンスは少し考えた後、
 「さっき見張りやってた奴なら知ってると思うぜ」
と言った。
 「確かドクとガウィンだ。まだ近くにいるはずだぜ。ほら、あそこ」
 テレンスの指の先にドクとガウィンの二人が見えた。
 「ありがとう」
 テレンスに礼を言うと、ハムは又走り出した。
 「ドク!ガウィン!!」
 「ん・・・、ハムではありませんか。どうかなさりましたか?そんなに呼吸を乱して・・・」
 ドクはハムに言う。
 「大したことじゃないんだが、アーネス見なかったか?」
 ガウィンは一瞬眉を寄せたが、ドクは気にせず言う。もしかしたらガウィンの反応に気づいてないのかもしれない。
 「アーネスは少し反省すると外に出て行かれました」
 ガウィンはドクの言葉を遮ろうとしたが、ドクはまたも気付かず続ける。
 「あそこに大きい木があるでしょう。恐らくアーネスはそこですよ」
 ドクは微笑んだ。
 「ありがとう。ご苦労さん」
 「ハム」
 走り去ろうとするハムをドグは呼び止める。
 「・・・まだなにかあるのか?」
 不思議そうにみるハムに、ドグはいう。
 「一つだけ。あの木の周りだけ邪気が薄いでしょう。だから少しナパイヤス達に手伝っていただいて、調査したんです。あぁ、もちろんレニスさん、リカルドさんに許可もいただいて。・・・どうやら今、私が目印と言った木が関係あるらしく由来を調べてみたんです」
 「へぇ、どんな由来なんだ?」
 「あの木の由来は、『忘れていた大切なものが見つかる』と、大昔の人はいった。という言い伝えがあるそうです。ナパイヤス達の話だと神木だそうですよ。もしかしたら大昔、精霊が住んでいた可能性があるそうです。  ・・・あの木の周りには不思議な力を感じます。害はないものとナパイヤス達はいってましたが・・・。行くのでしたら、これを持って行ってください。」
 そういうとドグは自分の鞄から出してハムに差し出す。
 「これは・・・?」
 布に包まれたそれを受け取り、ドグに訪ねる。
 「あけてからのお楽しみで」
 ドグは笑っていう。横でガウィンが何か言いたそうにドグを凝視する。
 「それと万が一のために薬草を持って行ってください」
 ドグはハムに薬草を差し出す。
 (どっちの万が一だ!!)
 ガウィンは心の中で叫ぶ。
 「・・・まぁ、いいか。ありがとう」
 ハムは礼を言うと、野営地の外へ出て行った。
 「ドク。ここはアーネスは独りにしてやるところだろ」
 ハムが見えなくなってから、ガウィンが言う。
 「いえ外には妖魔がいるかもしれませんし、お迎えは早いほうがいいですよ」
 ガウィンはため息をついて、「もう二度とコイツと見張りはしたくない」と思った。
 

 (結構泣いたな)
 アーネスは自分の涙を拭きながら、思った。
 辺りを見回すと、やはり気配を感じない。
 (もうそろそろ帰らないと・・・)
 そう思い、立ち上がる。
 ざわざわ。
 「・・・!!」
 アーネスは弓矢を構える。
 (何かいる)
 先程まで何も気配を感じなかっただけに、警戒心が強まる。
 アーネスはこの感覚に覚えがある。
 身震いを隠せない。
 妖魔!!
 そこに二体の妖魔が草木の間から現れた。
 「くっ!!」
 アーネスは咄嗟に後退し、一本目の矢を放つ。
 「はっ!!」
 矢は見事に命中したが、差ほどダメージにはなってないようだった。
 (火竜ならまだ何とかなるのにっ!!)
 舌打ちし、迫ってくる妖魔の攻撃をかわしながら、後退を続ける。
 特に妖魔は体力が高く、何発射抜けば終わるか想像できない。
 左からの攻撃をかわし、右からの攻撃は何とか受け止める。
 「はぁぁぁ!」
 さらに一発放つが、妖魔は腕に刺さった矢を特に気にせず、さらに攻撃を仕掛けてくる。
 一回目の攻撃は何とか受け止めるが、はじき返し、体制を整える前にさらに一撃がアーネスを襲う。
 「くぅっ!」
 何とか持ちこたえるが、かなり堪えた。
 体中の力が抜けていて、満足に動かない。
 「あぁぁぁぁっ」
 妖魔も隙を逃さずさらに攻撃を仕掛けてくる。左腕に当たり、アーネスは衝撃で吹き飛ばされ、ろくに受け身もとれず、そのまま地面に叩き付けられる。
 すぐに立ち上がろうとするが、思いっきり地面に叩き付けられ、思うように息が出来ない。辛うじて首をあげるが、そこにはすぐそこまで迫った妖魔の姿が映った。
 ・・・やられるっ!!
 己の無力さに、唇をかみ、情けなくなった。
 アーネスは死を覚悟し、反射的に目を閉じた。
 しかしくるはずの衝撃が、一行にこない。恐る恐る目を開けると、見慣れた後ろ姿が目に入った。
 一瞬、我が目を疑う。
 「・・・ハム」
 声に出して名前を呼ぶ。
 今日激しく喧嘩をして、きっと、かなり酷い言葉をぶつけてしまったのに、彼は今、妖魔の拳を剣で受け止めアーネスを守ってくれていた。
 泣きたくなった。
 「大丈夫か、アーネス!!」
 その言葉で、我に返る。
 「大丈夫」
 アーネスは負傷した左腕を押さえ、泣きそうになる自分を奮い立たせ立ち上がる。
 「一気に片づけるぜ!!」
 ハムが威勢よく声を上げる。
 「もちろんよ」
 アーネスも便乗するように弓矢を構え直す。構えると負傷した左腕から血が垂れ、服に染み込み、赤く染まる。
 負傷した左腕では打てて二発。
 (絶対仕留めてみせる!!)
 アーネスは意識を集中させる。
 ハムはアーネスの攻撃を邪魔させないよう妖魔の注意を自分に寄せる。
 「こっちだぜ」
 言うと同時に剣先が妖魔の喉を狙う。
 「せいっ!!」
 ハムが妖魔に切り込む。狙うは急所と言わんばかりに妖魔の懐に潜り込む。力を込め、上から剣を振り下ろす。
 「はっ!!」
 同時にアーネスは矢を放つ。見事命中し、妖魔は暫く苦しそうに喘いだが、そのまま絶命する。
 「「次っ!!」」
 ハムとアーネスはもう一体の妖魔に矛先を向ける。
 「いくぜ、アーネス」
 ハムが自分の後ろにいるアーネスに言う。
 「ドジらないでよね」
 アーネスは笑いながら言う。
 ハムは「任せろ」と言わんばかりに不敵に微笑んだ。

 
 妖魔相手の戦いは無事勝利したが、アーネスの左腕は血が流れていた。
 「お前、無茶しすぎだ」
 ハムが怪我を見ながら言う。
 「あんたよりマシよ。・・・どうして、ここにきたの?」
 怪我にドグからもらった薬草を塗りながら、アーネスが言う。
 ハムはドグからもらった『投げてからのお楽しみ』の布を口で裂きながら、「聞きたいことがあった」と言った。
 「聞きたいこと?」
 アーネスが聞き直す。
 「今日お前と喧嘩しただろ。あの時のことが気になってさ。・・・あそこまで向きになってたしさ。あー、なんて言ったらいいか分かんないんだけどさ、その・・・」
 照れながら悩むハムの姿にアーネスはおもわず吹き出す。
 「あははははははは」
 ハムは少しカチンときたのか、眉間に皺が寄る。
 「ごめん、ごめん。でも、もういいの。今、やっとわかったから」
 「俺にも分かるように説明しろよ!!」
 ハムは、「せっかく気にしてきたのに」と言わんばかりの顔で言う。
 「それはね・・・」
 アーネスは立ち上がって木の前に立った。
 ハムを指をさして言う。
 「私のポジション」
 アーネスはそう言うと笑った。
 ハムもつられて笑う。
 二人の笑い声が静かな森に木霊するように響いていた。
 そして木から光が降り注ぐ。
 「なに・・・?」
 アーネスが降り注ぐ光を手で受け止めて言う。
 「これが・・・!」
 ハムも光を手で受け止め、呟く。
 「知ってるの?」
 アーネスが木を見るのをやめ、ハムの方へむき直す。
 「俺もついさっき聞いたばかり何だけどさ・・・。この木はいわゆる神木らしいんだ」
 「神木・・・」
 そう言うとアーネスがもう一度神木を見上げる。
 「ドグの話だとこの辺の邪気が薄いのはこの木をおかげなんだとさ。大昔は精霊でもいたんじゃないかって。あぁ、それと・・・」
 そこで一度ハムは話を切る。アーネスが、
 「それと・・・?」
呟くと同時に、手から光がこぼれ落ちる。
 「『忘れていた大切なものが見つかる』って言い伝えがあるらしいぜ」
 ハムが無邪気な笑顔をアーネスに向ける。
 「大切なもの・・・」
 譫言のように呟く。
 「見つかったか?」
 アーネスに問う。
 「大切なもの」
 アーネスは目に涙を溜ながら、頷く。
 「見つかった」
 そして小さく呟く。
 ふと思い出したように、泣き顔を見られたくなくて後ろを向く。
 「見やしねーよ」
 「・・・!」
 ハムがアーネスに背中を向ける。
 「泣き終わるまで、後ろ向いてるから」
 「うん・・・」
 アーネスの精一杯の返事とお礼の言葉だった。
 そんな二人を照らすかのように光は休むことなく降り注いだ。

  
 END  

 


やってしまいました。
ついにやってしまいました。
妄想のままの物体、DEVIL FORCEV剣と花束でハム×アーネスです。
いきよいにのってたら、長くなりました。
知っている人がいるのかどうかも微妙ですが・・・。
古いゲームで我が家のパソコンではもう動きません。
言葉使いが違うところがありましたら、よろしければご指摘下さいませ。
2006.11.27 天神あきな

そして加筆終了。
ハムとアーネスは互いの位置を守りつつ、成長できるといいなって思ってます。
反発するのも自分の意見を持っているからだと思うし、しっかりぶつかり合えるのはいいことに思います。
大切だから、ぶつかりあう二人が書きたかっただけです。
2007.5.3
  
一本にまとめました。
ちなみにこのゲームはXPだと互換性を使えばプレイできますよ!(ビスタはどうか知りませんが・・・)
2009.11