静かに積もってゆく、雪。
 ここクォーダでは普通のことだ。
 


 雪語り  



 「うー、ん・・・?」
 椅子の上で大きく背伸びをする。外見だけ見れば三十代、それ以上に見られがちの顔で、ふけ顔である。
 彼はエスク・ガノブレード。
 クォーダの参軍である。
 今、彼の目に映っているのは、窓の外から見える雪である。
 彼はクォーダの隣の国である、大国ラウル出身である。
 ラウルとクォーダは隣接した形でありながら、気候の違いか、ラウルはあまり雪が降らない。年に一回拝めただけでもいいぐらいだ。
 しかし隣の国であるクォーダは、よく雪が降る。そして、よく積もる。
 先のクォーダ第二独立戦争時は、これが有利となった。
 雪国ではないラウルの兵は、雪で足場がとられ、対するクォーダは雪の中での訓練がもはや日常化している国である。
 雪を見ていると、そんなことを思い出す。
 (カシスの部屋で酒を飲んだの時だったか・・・、ラウルでも雪が降ったな)
 カシスが留学という形で、ラウルに“人質”に出されていた頃、カシスの部屋で酒を飲んだこと何度かある。あの時、ラウルでも雪が降って、「珍しいな」と話をした。
 今では珍しくもない。
 雪が降ると、エスクは熱燗を飲む。
 そういえば、カシスが「クォーダの雪は綺麗です」と言っていたことを思い出す。
 エスクは酒を飲む手を休め、窓に身を乗り出す。
 外ではクォーダ兵が、雪の中訓練をしている姿や、町では第四師団が警備に当たってるだろう。彼らは雪の中でも元気だ。
 その中、元気のいい声が聞こえる。
 よくよく見ると、誰かの悪ふざけから始まったのだろう。訓練していた兵達の中に人垣ができる。その注目のまとは、第一師団長のリューダスである。
 誰かに雪を投げたのだろう。雪の投げ合いが始まっている。
 止めるものはいない。
 「元気だねー」
 思わず感心してしまう。
 「エスクさんも混ざってきたらどうですか?」
 「カシスか・・・」
 「勝手にお邪魔しています」
 カシスが部屋の戸を閉め、エスクに笑いかける。つられてエスクも笑った。
 「雪ではしゃぐか。羨ましいな」
 「僕はこんな風に、雪を遊ぶものとは思ってませんでした」
 カシスは苦笑しながら「いつも窓からです」と言う。
 遊んでくれる相手もいなかっただろう。
 そんなカシスから目を離し、窓の外ではしゃぐ兵達を見る。
 先ほどより、心なしか見物人が増えた気がする。
 「雪を見ると思い出すことがあるんです」
 「へー、何を思い出すんだ?」
 エスクが興味を持ったらしく、窓の外から目を離し、カシスを見る。
 「ラデュスがエディウス卿の命令で僕を迎えにきたあの日。突然国王になれと言われたあの日。僕はエスクさんに剣を向けた雪の日だった」
 「あの時は、互いに怖じ気ついたな・・・」
 「そうですね。・・・あの時僕は、ただ怯えてた。クォーダに帰っても、国王という重圧に耐えられる自信がなかった。クォーダにはそんなにいる日もなかったし、知り合いなんて、いなかった・・・」
 「・・・だろうな」
 「だから僕は・・・、エスクさんに感謝してるんですよ」
 そう言うと、静かに笑う。
 エスクは満足そうに頷いて、飲みかけの熱燗に手を伸ばす。
 「あの時も、酒が口を軽くしたな」
 「そうですね」
 そう、あの時もお酒で口が軽くなったと、彼は言った。
 

 
 「陛下ー!!」
 外から大きな声が聞こえる。
 カシスとエスクは、思い出語り終わりにし、窓の外をのぞく。窓の外では、リューダスとラデュスが元気よく手を振っている。
 「おいおいおい。ラデュスまで、混ざってるのか・・・」
 エスクがぼやく。
 「陛下も一緒にどうですかー」
 リューダスが叫ぶ。
 その言葉に、カシスがきょとん、とする。
 エスクが横で「くくっ」と笑い、カシスの背をたたく。
 「よかったじゃねぇか。窓の外じゃないところの雪から、声かけてもらえて」
 「ええ、でも・・・」
 カシスは初めてのことに、どう返せばいいのかわからない様子で、余計楽しくなってくる。
 「エスクもついでにどうだ。酒ばっかり飲んでると、酒に飲まれちまうぜー!」
 ラデュスがからかう言葉をはく。
 「余計のお世話だ。そんなこと言ってる間に女でもつれ!」
 すかさず反撃に出る。
 そんな様子をカシスは横で忍び笑いをする。
 「少し待っていてください」
 そう言うと、窓から手を離す。
 「エスクさんもどうですか?」
 そう声をかけると、予想通りの言葉が返ってくる。
 「体を動かすのは、専門外だ」
 カシスは笑った後、部屋を出る。
 カシスが去るのを見送り、部屋の戸が完璧に閉まった頃、戸に向けて杯を掲げる。
 「感謝してるのは、俺もだぜ。カシス」
 そう言うと、酒と一気に飲み干した。
 


  END

  


はい、こちらにも手を出しました。あいかわらずマイナーですいません。知らない方、ごめんなさい。
After Devil Force 狂王の後継者の小説。カシスとエスクがのんびり語るという、特におもしろくない代物です。
知らない人はさっぱりわからない、おもしろくないものです。
ちなみにこの小説は、シナリオを担当されました
OVER LOAD大澤良貴様のHPに連載されてます小説版を元に書いてます。
ゲーム本編では、カシスがエスクに剣を向けるシーンはありませんのでご了承ください。
本当は雪合戦両成敗で第四師団長クレップス・リデューを出そうと思ったんですか、そうすると序盤に出てきたエスクが薄くなっちゃうのでやました。
まぁ何故エスクが出しゃばっているというと、彼はあまり書かれないからです。
なら、書いてみよう。(安易)
クォーダ第二独立戦争終了後のカシスの心境の変化を書いてみたかったんです。
今までうち解ける人が少なかったぶん、もちろん仕事もしながら、遊んだり、思い出に浸ったり、そして立派な王様になってほしいです。
2007.6.1 天神あきな

そういえば、今は夏だ。何雪ネタやってるんだよ。季節まる無視だぁぁぁ!!